上野に出かけたついでに奏楽堂の日曜コンサートを聴いてきました。今日はチェンバロが演奏される日になっており、演奏者は東京藝術大学の学生である脇田英里子さん、選曲はバッハとスカルラッティでした。
以前の日曜コンサートでは脇田さんのチェンバロが1曲しか聴けなく「ちょっとこれは物足りなく」と書きましたが、今日はしっかりソロを聴くことができ、やっと満足できたというところです。
最初の演奏はJ.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲第1巻より第1番ハ長調、第2番ハ短調です。ピアノを習った人でなくとも、グノーが後に「アベ・マリア」に編曲したことでも有名な曲ですので、聴き覚えはある曲でしょう。しかし、生のチェンバロで奏でられる平均律というのはまた格別というか別格でして、予期せぬ以上の感動を覚えてしまいました。適度に響くホールの中で、静かでありながら激しい美しさに包まれることの、これ以上の至福があろうかという感じです。
続いてはD.スカルラッティのソナタK.24です。スカルラッティといえばホロヴィッツが有名ですが、こちらもピアノで聴くのとチェンバロで聴くのでは大違いですね。スカルラッティはバッハと同時代を生きていながらもイタリア人ですから、音楽の飛翔するところや歌うところがバッハとは趣が全然異なります。その闊達さが、時に凄みとなって聴くものを圧倒するのですが、脇田さんのチェンバロは軽やかさと快活さ、そして凄さの両面を適度に振幅しながら、スカルラッティの曲の面白さを十分に伝えてくれたと思います。
最後はJ.S.バッハのフランス組曲より第5番でしたが、これもなかなかのもの。平均律を聴いていても思いましたが、ふとパイプ・オルガンを聴いているのではないかと思う瞬間があります。チェンバロというのは楽器の性質上、強弱がつけられないので色々と工夫することで変化を付けるらしいのですが、音を重層的に重ねてゆくことで、音の粒立ちが幾重にも重なり、パイプオルガン的な響きとして聴こえるようです。もっとも素人的なその場しのぎの考えですから、実際のところはどうなのでしょう。
蛇足ですが、今日の脇田さんは紫色の落ち着いたシンプルなロングドレスをまとっておりまして、シックな雰囲気でありました。機会があればスカルラッティ集やフレスコバルディ、クープランなど色々な曲を聴かせてもらいたいと思ったのでありました。
��0分300円のミニ演奏会ですが、一服の清涼剤として聴かれるには贅沢すぎる内容であると思いますよ。
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