東京藝術大学 大学美術館で開催されている「興福寺国宝展」を観てきました。
阿修羅像で有名な興福寺は古都の奈良県を代表するお寺で、創建依頼、平安末期の戦火や落雷により幾たびも灰燼に帰してきました。鎌倉時代から復興がはじまり、堂宇の再建や造像がなされており、この復興の中で運慶をはじめとする「慶派」の優れた仏師が造像を担当しました。興福寺は平成22年(2010)に創建1300年を迎えるに当たって様々な事業が計画されており、今回の展覧会もその一環とのこと。
まあ、そういう面倒なことはさておき、パンフレットにある金剛力士像や無著菩薩像にお目にかかれるというので、楽しみにしておった次第です。
展示は大きく二つに分かれているのですが、何と言っても圧巻は3階の諸仏たちに尽きます。入って迎えてくれるのが、上に示している運慶の手になる国宝 無著菩薩立像(右)と世親菩提立像(左)です。
無著は五世紀頃に北インドで活躍した僧で世親とは兄弟。穏やかななかにすくとした威厳と敬虔さ、そして静寂さ、それでいて信仰心に裏付けられたゆるぎなさと力強さ。どこにも隙の見当たらない立像を目にしますと、思わず溜息がもれてしまいます。顔の表情といい、法衣の流れといい、全く持って木彫技術の素晴らしさには目をみはります。
完成当時はおそらく彩色がされており、現在私達が目にする像とは全く違ったものであったとは思うのですが、時代を超えて伝わる力には改めて感服いたします。
これ以外にも康慶作とされる円陣を組むように拝されて展示されている四天王立像にも、その迫力に圧倒されます。踏み潰された邪鬼たちの表情はノートルダムの悪魔を彷彿とさせます。こちらも当時は極彩色であったろうことが伺われ、当時の姿を思い浮かべながら憤怒の表情に魅入ってしまいます。
運慶の三男である康弁作の国宝 龍燈鬼立像(左)は、これまた珍しい像。四天王に踏み潰されてた邪鬼が立ちあがり、灯明を頭に支えているというもの。首の周りには蛇をまとっています。情けなさの中に愛嬌のある表情で、諸仏の中でもひときわ観覧者に人気を博しているようでした。筋骨隆々の小柄な体にフンドシ姿が何ともユーモラス、踏みつけられた邪鬼の矜持を感じます
パンフレットに示されている国宝 金剛力士像 阿形も圧巻の一言。正面から、側面から、背面から、さまざまな角度から眺めましたが、まるでロダンかミケランジェロかと思うような筋骨隆々の造形美。腰にまとった布に描かれた装飾も見事。
という具合に、仏像が好きな方には、けっこうたまらない企画ではないかと思います。そのほか地味ではありますが、紺地に金文字で書かれた経典(名前は失念)や春日版板木など、経典ファンも充分満足できる品揃えです。あまりに有名な阿修羅像が展示されていないのは残念でしたが「鎌倉復興期のみほとけ」というテーマですから、いたし方ありませんか。
それにしても、こんな展覧会でも結構込んでいました。NHKが宣伝したというせいもあるのでしょうが、老いも若きも仏像好きな方というのは多いのですね。
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