田中宇(さかい)氏はインターネットで国際ニュース記事を配信している方で、時々サイトをチェックして拙い国際関係に関する知識を修正しているのですが、この本はまさにこの頃私が考えていたこと、すなわち「アメリカ以降~取り残される日本」に対する示唆を与えてくれるものでした。
本日29日のテレビ朝日の「たけしのTVタックル」でも安保を離れて日本が成立するか否かでムチャクチャな激論が闘わされていました。安保ありき安保の是非ということではなく、安保の相手であるアメリカについて「よーく考えよう」という内容になっています。
田中宇(さかい)氏はインターネットで国際ニュース記事を配信している方で、時々サイトをチェックして拙い国際関係に関する知識を修正しているのですが、この本はまさにこの頃私が考えていたこと、すなわち「アメリカ以降~取り残される日本」に対する示唆を与えてくれるものでした。
本の帯には本文から引用した以下の文が掲示されています。
われわれはアメリカが弱体化し、自己崩壊していった場合の「その後の世界」を考えてみる必要性が出てきている。日本人のほとんどは「アメリカが没落した後の世界」について、想像もしたことがない。アメリカが衰退する可能性が少しずつ増しているのに、アメリカが衰退するはずがないという前提で日本の将来を考えているのは、非常に危険なことである。
田中氏はアメリカ衰退の兆候を幾つかかの事例で説明しています。例えばアメリカ産業の象徴であった航空機産業や自動車産業の衰退、世界のドル離れ、そしてブッシュ大統領のアメリカにとってプラスとはいえない経済政策などなど。
私は氏のサイトで「ネオコン」という存在について知識を深めましたが、氏自身も「ネオコン」に対する考え方を模索しながら修正していることも、この本を読むと良く分かります。日本のマスコミは「ネオコン」という言葉さえも一面的にしか報道していませんが、そこに氏とのスタンスの違いがあると思うのです。逆にニュースや週刊誌での国際解説などは、田中氏のサイトや著作に接していると多くは既知のことでしかなくなります。
そういう田中氏なのですが、この本では大胆な仮説を打っています。それはアメリカ経済が衰退してゆく政策を「故意に失策をやっている可能性がある
」としているのです。(P.25) そんな馬鹿なと思うのですが、田中氏はそれをタカ派と中道派の戦略の違いから分析し、最近のイラク戦争の現状も踏まえながら説明してゆきます。
また911テロが生じたとき、ハンチントン教授の「文明の衝突」が現実になったとマスコミは解説していましたが、これについて田中氏は、
��・11はアメリカかわの政治的な理由で誘発された可能性があることを考えると、ハンチントンの論文は「予測」ではなく「企画書」だったのだと感じられる。(P.175)
と書いています。田中氏は別著で911テロをホワイトハウスはわざと防がなかったフシがあることを早くから掴んでいて、アメリカの陰謀説に近い疑いを提示していました。それの真偽は私には判断がつきませんが、アメリカはタカ派と中道派がそれぞれ、壮大な世界戦略を持ちながら国家運営を行っているのであることは気付かされます。
田中氏はアメリカの(世界で一番良い社会システムだと教育されてきた)民主主義も既に歪められていることを指摘しています。「すでにアメリカは、かなりの「警察国家になっている」
」(P.120)という指摘には驚かされます。
アメリカの民主主義や人権など、為政者の一方的な都合で歪められていることは、たとえば911テロの容疑者をキューバのグアンタナモ空軍基地に収容していることをとっても明らかであるかもしれません。(本書P.19や「世界2004年4月号」岩波書店p.203 グアンタナモの「暗闇」の中で~蹂躙される人権:ル・モンド・ディプロマティックより などを参照)
翻って日本の現状を考えると、アメリカ批判もなく思考停止に近い「対米追従」です。日本の指導者だってそんなに馬鹿であるはずがありませんから、もしかすると、これこそ思考停止のフリをした最も狡猾な小判鮫的外交戦略であるのかもしれません。そうであったとしても、くっついている魚が死に体になりつつあるのであれば、新たな方向性を模索しなくては資源のない日本の未来は暗いと思いますし、くっついている相手についても判断可能な情報が欲しいと思うのです。
いずれにしても、馬立誠氏の「日本はもう中国に謝罪しなくていい」でも指摘していましたが、日本が急にアメリカに反旗を翻すのは得策ではないことは確かです。それだからこそ日本はアジアを含め新たな外交戦略が必要な時期に来ており、経済・安保を含め日本の将来を真剣に問うべき時に来ていることだけは確かなのではないかと思うのでした。
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