「わが経営」とタイトルにあるように、これはジャック・ウェルチの自伝です。しかし単なる自伝ではなく、彼の経営哲学が何であるか、従業員40万人も超える企業を企業を経営するとは、その企業を変えるとは、一体どういうことなのか。5年足らずの間に、全社員の四人に一人、すなわち11万8千人もの人員をリストラをすることは正しいのか、M&Aを繰り返すことは経営にプラスになるのか。
全ては市場で、「ナンバー・ワンかナンバー・ツー」に成るため。およそ企業経営に感心がある人ならば、興味の尽きない話題が続きます。特にCEO後継選びの内実や、そこでの有名な「飛行機面接」のエピソードは読み物としても秀逸です。
しかし日本にはこれほど厳しく情熱的な経営者は見当たらないかもしれません。特に「選別」ということについては、日本人の企業風土からは冷酷と感じられるかもしれません。ウェルチは成績を上げようとする努力する行為は小学一年のときから生活の一部になっている。(中略)生まれてから20歳になるまで、われわれはみな段階評価を受けている。活動している時間のほとんどを過ごす職場で、(選別評価を)一体なぜやめなければならないのか。(P.278 「第11章 人材工場」)
、成長や昇進の見込みのない人たちを残しておくことこそ、残酷なことであり、"間違った親切"ではないか(P.277)
と主張します。そこには徹底した能力主義と競争社会を前提とした企業経営があります。
業績だけがものをいう世界なのだ。(P.287)それを是とするならば、企業経営者のみならず管理者にとっても様々なアイデアを提供してくれる本といえます。もっとも、ジャック・ウェルチは冷酷なのではなく、本書を読む限りにおいても極めて人間的であり、企業の源泉は「人材」であると考えていることに間違いはありません。
「ビジョナリー・カンパニー」で書かれていた「ORの抑制」ではなく「ANDの才能」ということも、ジャック・ウェルチの言葉で以下のように示されます。
- 最高の給与を支払う一方で、賃金コストを最低に抑えている。
- 長期的な視点で経営する一方、短期的にも、"食える"ようにできるのか。
- 「ソフト」であるために「ハード」になる必要がある。
(P.216 「第9章 「ニュートロン」時代」)
彼のビジョンに対する熱意と実行力には、ほとほと舌を巻きますし、ここまでポジティブな人間が存在することには驚きさえ感じます。40歳半ばで従業員40万人を要するGEの会長(CEO)という立場になったのですから半端でないことは認めますが、ウェルチの作り上げたような企業で働くのは、おそらくシンドイだろうな・・・なと。
このような「ガムシャラ」な企業経営が21世紀も続くのだろうか、などと暢気なことを考えていたら、おそらく数年後には自分の職どころか企業ごとなどなくなるのかもしれません。中国やインドなどBRICsの企業エリート達を支えるモチベーションは、今の腑抜けた日本の企業が持つそれよりも、はるかに上昇志向的であり、この瞬間も猛然と働いているのだろうなと・・・
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