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せっかくなので、山口さんと猿谷さんの作品についても言及しておきましょう。
最初の山口さんの曲は「だるまさんがころんだ」という無邪気なタイトル、しかし童謡風のほのぼのさとは全く異質の音楽世界、静と動の激しい対立と緊張が表現されています。山口さんはこの曲が残響の長いホールで演奏されることを意識したそうです。長く引き伸ばされる音、小刻みなフレーズ、弱奏とたたきつけるような音塊、そして最後の消え入るような終わり方が印象的。5分程度の短い曲ですが、響きの生み出す面白さと不思議なイメージを堪能できます。《本当は怖い「だるまさんがころんだ」》
猿谷さんといえば、「ディープインパクト~栄光」で有名な作曲家(らしいです)。慶応義塾大学法学部卒業後、ニューヨークのジュリアード音楽院作曲科に留学し優秀な成績で卒業されているという異色かつエリートな経歴。彼の書くプログラムノートも哲学的で難解。
雑踏の中に時折飛散する少し碧みがかった花弁のような真理を拾い集めてみたいとあるのですが、私には雑踏の中での無秩序で不安な断片のようなものしか聴き取れず。こちらの曲は、今の私には余り馴染めませんでした。猿谷さんは現代作家の中で確たる地位を築いている方のようですので、他の作品も機会があれば聴いてみたいと思います。