「けものがれ、俺らの猿と」と「屈辱ポンチ」という二編が納められています。どちらも町田節が全開の中編小説です。ダラダラと改行少に続く活字を読み進むうちに、脳内は痺れるような町田ワールドに支配されてしまいます。
内容は典型的なダメタイプの主人公が巻き起こす脱力的努力の連続劇。だからといって「またかよ」といって飽きてしまうわけではなく、やっぱりそれでも面白いと思ってしまいます。町田氏は凄いなと。
「けものがれ、俺らの猿と」という奇妙なタイトルの作品における登場人物とストーリー展開は、本当に陳腐な言い方ですが不条理そのもので、更にはB級ホラー的な雰囲気さえ漂わせており秀逸です。途中で登場する田島という人物の得体の知れ無さ、ワケの分からなさ、通じなさから生じるジンワリとした恐怖。相手の真意が理解できないままに振り回される主人公の姿。そして主人公が頑張れば頑張るほど、底なし沼に沈んでいくかのようなドツボの展開。かくも不器用でいること、現実との接点を欠いている姿は、確かに喜劇ではあります。
「屈辱ポンチ」という、これまた意味不明の人を小莫迦にしたようなタイトルの小説も、目的や真意の分からないミッションに真面目に取り組む主人公達を描いています。その真面目さがクソ真面目であるほどに現実的な効果は全く得られない。彼らの努力とはほとんど無関係に、それを嘲笑うが如くに世界は動いていきます。この現実とのズレに笑いながらも、ふと考える。
本当に心の底から町田喜劇を笑えるのか、自分の成しているミッションに本当に意味があって、目的を理解しているのかと。いやオレは本当にストレートに世界と「つながっている」のかと。
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