東京芸術劇場で読売日響のマチネシリーズを聴いてきました。
- モーツァルト:ピアノ協奏曲第26番ニ長調 K.537 《戴冠式》
- R・シュトラウス:交響詩《英雄の生涯》
- 6月10日(土)14:00 東京芸術劇場
- 指揮:金聖響 読売日本交響楽団
- ピアノ:コルネリア・ヘルマン
- コンサートマスター:デヴィッド・ノーラン
以下のレビュはネガティブなものになってしまいましたが、考えてみれば、贅沢にして傲慢な感想です。ハイレベルな音楽をいつでも聴ける環境に居ることに、改めて気付き感謝すべきかもしれません。
1曲目のモーツァルトK.537。ピアノは日本でもたびたび演奏しているコルネリア・ヘルマンさん。彼女は写真で見る限り非常に美しい方で追っかけも多いのだそうです。母親が日本人であることもあってか、親しみやすい顔立ちです。
今日もドレスは、彼女のトレードマークなのか深い赤です。金氏のモーツァルトは、オケの人数も多くオーソドックスなモーツァルト演奏のように感じました。鮮烈なことはしない。それは彼女のピアノも同様です。
モーツァルトの突き抜けた長調の明るいこの曲に対し、彼女のピアノは少しくぐもった柔らかな音色に聴こえる。ガンガン攻めるピアノではない決してない。指先からの変化は、ときにはっとするほどの微妙な色彩を聴かせてくれます。でも、それが金氏やオケと、いやこの曲の雰囲気と合っていたか。
というのも、彼女はモーツァルトを得意としているとのことですが、今日のピアニズムからは、むしろシューマン的な香りを感じ取りました。彼女の演奏は、天真爛漫でいながら計算づくのモーツァルトの天才による至福とは違った、もっと端正なモーツァルトでした。
続く《英雄の生涯》ですが、この空疎とも云える曲を金氏がどのように料理するかにも、大きな興味がありました。しかしこの曲に期待する浪漫という点からは、今ひとつであったなあ、というのが正直な感想。「戦場の英雄」あたりの音量は凄まじいものがありましたが、粗さも否定できない。圧倒的な暴力の氾濫という雰囲気は出ていましたが。コンマスのノーランさんの奏でるテーマも、あまり心に入ってこなかった・・・。
《英雄の生涯》というのはR・シュトラウスが音楽で描いたわざとらしい戯曲だと思っています。金さんの指揮からは統率力と抜群の制御能力の高さを感じます、どちらかというと理知的といえましょうか。これを演奏するならば、阿呆くさいくらい成り切って演奏しなくては中途半端なものとなってしまうような気もします。生意気で勝手な感想で恐縮です。もっとも私の聴き方が、過去の名演奏家のイメージにひきずられ過ぎているという気がしないでもありません。
読売日響の音は良いですね。ドイツもの、特にマーラーやワーグナーなどをこのオケで聴くと格別だと思います。
ヘルマンさんのピアノは、できれば小さなホールのソロで、シューマンとかブラームス、あるいはモーツァルトのソナタなどで聴いてみたいものです。おそらくはコンチェルトとは違った魅力を聴けると確信します。今回は金聖響さんのブログを読んで、是非とも聴いてみたいという気になって駆けつけました。金聖響さんの演奏は、やっぱりベートーベンあたりを聴いてみたいですね。
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