この場では何度も陰謀論について書いています。改めて、これとどう付き合うかと考えてみました。
コロナが流行り始めた頃から、SNS上では陰謀論が俎上に上ることが多くなってきました。自分も、そういう世界があると知ったのはちょうど昨年の今頃のことです。
ここ一年の間に目にした話題では、コロナは生物兵器、コロナは造られたパンデミック、ワクチンへのチップ混入疑惑、二酸化炭素温暖化説の嘘、気象操作、ケムトレイル、人工地震、トランプ大統領を崇めるQAnonたち、不正選挙、人身売買、幼児誘拐、臓器取引、大麻解禁、人気芸能人の自殺、ディスクローズ、緊急放送、大量逮捕などなど、枚挙にいとまはありません。
これら陰謀論者は、J.F.ケネディ暗殺(1963年)、アポロ月面着陸(1969年)、日航機墜落(1985年)、ダイアナ妃事故(1997年)、911米同時多発テロ(2001年)、311東日本大震災(2011年)なども嘘または仕組まれていたと考える人が多いようです。
教育や歴史、報道されている事実の否定なのですけど、陰謀論とは別に、保守陣営による歴史修正主義というのもあり問題の把握をややこしくしています。すなわち、明治維新、真珠湾攻撃、二つの世界大戦、南京大虐殺、従軍慰安婦問題、自虐的歴史史観、ルーズベルト史観、アウシュビッツのガス室、ナチス悪玉説等などに対する見直しを迫る主張です。保守でない人による日ユ同祖論、田布施システム、原爆地上起爆説などもありますか。
陰謀論はここにとどまらず、国際金融資本、ロスチャイルド、フリーメーソン 、イルミナティ、ジョージアガイドストーン、NWO(New World Order)、ユダヤ、カニバリズム、アドレナクロム、レプテリアン、複数の宇宙人の存在まで。
ここから先はいわゆる非科学のスピ系と言われる分野に突入し、三大宗教の起源、古代遺跡の秘密、UFOと宇宙人の関係、パンスペルミア説、遺伝子操作、ハイブリット、ダーウィン進化論、地球や世界に隠されたコード、魚座の時代から水瓶座の時代、分岐と覚醒、支配からの解放、フリーエネルギー、お金のない世界、Gesera/Nesera、アセンション、多次元世界、フラットアース、地球空洞化説、スターシードと、どんどんスケールも時間大きく拡散していきます。
自分のような還暦世代には懐かしい五島勉のノストラダムスの予言とか、自分は当時はスルーしましたが、2012年マヤ歴による地球の終りとアセンションなどのブームもあったようです。
キーワードを拾うだけでクラクラ眩暈がしそうです。SFやライトノベルなど、フィクションの世界に留まってくれているうちはよかったのですが、コロナを契機に一気にブチ撒かれた感があります。
一言で陰謀論と片付けるのは簡単です。「陰謀論(Conspiracy Theory)」という呼び方も、もとはといえばCIAが造った言葉だとか言われますので、「トンデモ論」と呼んだ方が分かりやすいと思います。歴史修正主義を含め、共通事項は、いままで教えられてきた教育や常識の多くは嘘である、事実は真逆であり長い間隠されてきた、事実を知って「目覚めた」「覚醒した」と主張します。
自分は理系なので、事実に対しては科学的なアプローチで考えます。科学的の定義はいろいろありましょうが、プロセスを踏めば誰にでも検証可能であること、再現性があること、適切な因果関係の説明などと考えています。
陰謀論者と話すと、上記がごっそり抜け落ちていることがあります。「科学が万能ではない」「目に見えることだけが事実、真実ではない」「最後は自分の直感に従う」と言われてしまいうと、そこで議論終了、ゲームオーバーです。
自分のスタンスとしては、いわゆる陰謀論=トンデモ論に対し否定的かというと、実はそうではありません。トンデモ論のソースは誰が言っていることなのか、SNSの多くは無責任な脊髄反射的に拡散していて、悪質なフェイクも多い。でも、クラクラするようなキーワードの中にも傾聴すべきことがあると、考えるようになっています。自分が学んできた事が全て正しいとは、もはや考えてはいません。
以下のNewsweekの記事は、そんな陰謀論=トンデモ論とどう付き合うべきかというスタンスとして、非常に真摯なものです。以下に重要な点をピックアップしておきました。記事で強調しているのは、「対話」と「修正」です。
自分も日々「対話」と「修正」を続けています。
「地球平面説」が笑いごとではない理由 THE EARTH IS ROUND, BUT...:Newsweek リー・マッキンタイヤ(ボストン大学哲学・科学史センター研究員)
- 「ポスト真実」の時代に、科学や証拠を否定する人たちをどうすれば説得できるかは、まだよく分かっていない。科学者は証拠を示すことで自説を唱えるが、そのデータが受け入れられなかったり、整合性を疑われたりすると、「もう結構」と腹を立て、それ以上相手と関わるのをやめてしまうことが多い。
- むしろ科学者は、証拠や確実性や論理を語るのをやめて、科学的な価値観の説明をするべきだ。科学の最大の特徴は、方法ではなく態度にある。つまり、証拠を重視して、新たな証拠が見つかったら自説を自主的に修正する態度だ。その姿勢こそが、科学者と科学否定論者の最大の違いと言っていい。
- 陰謀論者は懐疑派を気取っているが、実はとてもだまされやすい人たちだ。証拠に対する彼らの態度はダブルスターンダードそのもの。自分たちが信じたくないことを示す証拠はどんなに確かな証拠でも不十分とされ、信じたいことを示す証拠はどんなにあやふやでも確証となる。「科学的な態度」はこれとは正反対だ。自説に固執せず、新たな証拠が出てくれば、検証し直す。
- 彼らに「証拠を見せろ」と迫れば、彼らは喜んで差し出すだろう。逆に「これが私の証拠だ」と突き付けても、却下されるだけだ。そうではなく、彼らに聞いてみることにした。どんな証拠があれば、自分の間違いを認めるのか、と。この質問は彼らの意表を突いたようだった。
- 結局、私はこの会場で誰の考え方も変えることができなかった。それでも、私はある重要なことを実践した。対話を行ったのだ。
- 研究によると、データは人の考えを変えられない。人は、信頼できる人との対話を通じて考えを変える。私が信頼してもらえたと言うつもりはないが、時間を割いて多くの人と言葉を交わすことで、ある程度の信憑性を感じてもらえた自信はある。
- 科学否定論と戦うために科学者にできるのは、確率に基づいて物事を考えることの重要性をもっと語ることだ。それを通じて、科学における「証拠」に関する人々の思い込みを突き崩す必要がある。
- 私が提唱したいのは、もっと多くの科学者がメディアに登場し、自分の研究成果だけでなく、科学研究のプロセスについて語ることだ。
- 科学の研究をしていれば、自分の仮説が間違っている可能性は常にある。科学否定論者と異なり、その可能性を徹底的に探るのが真の科学者だ。
過去には、こんな記事もありましたね。
コロナ後の職場で増える「ざんねんな人」図鑑
困った人に同僚・上司・部下はどう接すべき?
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