2021年3月25日木曜日

帝国ホテル周辺と再開発計画が発表される 2021年3月

帝国ホテル東京を建て替えるという報道が3月16日の日経新聞に発表されました。三井不動産らと周辺の内幸町地区を一体開発するとのこと。三井不動産は2007年9月28日に、帝国ホテル株の33%を取得しており、同ホテルの大株主です。(帝国ホテル東京を建て替え 36年度に完成予定:日本経済新聞)

株式会社帝国ホテルは、上記報道について「当社が発表したものではありません」「現時点で決定した事実はありません」として、同日16日に否定していました。

本日3月25日、正式に帝国ホテルは建替えを発表しました。報道によると、総事業費はなんと2000から2500億円にものぼるそうです。(帝国ホテル東京建て替えへ、総事業費2000─2500億円 ロイター)

東京商工リサーチによりますと、コロナの影響で帝国ホテルは2021年3月期の当期純利益は148億円もの赤字になるとのことです。(帝国ホテル 148億円の赤字へ

赤字なのに建替えとは、バックに三井不動産がいるとはいえ思い切ったものです。外資系5星ホテルが攻勢をかけ、ライバルのオークラの建替えが完了した中にあって、帝国ホテルというブランドだけでは経営的に難しく、生き残りをかけるには建替えしかないと、遅まきながら苦渋の決断をしたのでしょう。

昨年3月頃、最初の緊急事態宣言が出る前にホテルに行ってみましたら、宴会場やレストランは全て閉鎖、人影はほとんど見えず、まるで潰れる寸前のホテルのようで、愕然としたことを覚えています。

ところで、建築物としての帝国ホテルは、歴史を調べると大きくは三代目となるようです。新聞によるとホテルの建て替えが完了するのは2036年といいますから、まだ15年も先のことです。しかし1890年に初代帝国ホテルが誕生してから、たかだか150年で三代を終え四代目になるということは一代平均50年程度、日本における建築の命の短さを思わずにいられません。

特に二代目のフランク・ロイド・ライト設計による帝国ホテルは「東洋の宝石」とも称された名建築であったのに、地盤沈下と耐震性に疑問があるとして1968年に解体されました。今から思うと「当時は気が狂っていたのか」と思いますが、今でも状況は変わっていませんね。明治村に一部が移築保存されたのはせめてもの救いです。


以下に帝国ホテルの辿った年表を簡単に振り返っておきます。

1890年 明治20年 有限責任帝国ホテル会社が渋沢栄一、大倉喜八郎らの呼びかけで設立
1890年 明治23年 初代帝国ホテルが日本の迎賓館として鹿鳴館の隣に完成
         (設計:渡辺譲、ネオ・ルネサンス様式)
1922年 大正11年 火災により全焼




初代帝国ホテルは、現在のインペリアルタワー部分に面していました。上の写真のお堀は、現在の日比谷堀などではなく、埋め立てられた外堀だと思われます。

下の絵葉書では前面が鉄道道路になっていますが、時系列、位置関係が判然としません。



これは明治38年の地図です、外堀が埋め立てられる直前の頃の地図で、帝国ホテルの記載もあります。

ちなみに外堀が埋め立てられて鉄道高架橋、通称レンガアーチに変わるのは明治40年(1910年)の事です。現在、更にそれは、2020年9月にレンガアーチは耐震補強され日比谷OKUROJIとして生まれ変わっています。


1923年 大正12年 7月 フランク・ロイド・ライト館 完成
1923年 大正12年 9月1日 関東大震災の日が落成記念披露宴当日 
1945年 昭和20年 3月10日 東京大空襲にて約4割を消失 

 戦後はGHQにて接収

1952年 昭和27年 4月1日 接収解除、一般営業再開
1954年 昭和29年 第一新館完成
1958年 昭和33年 第二新館完成



写真手前が日比谷通り、ライト館の後ろが、第一第二新館になるようです。写真奥の鉄道は既に高架です。



昭和の写真です。ライト館ができています。既に外堀は埋め立てられてJR高架(レンガ橋)です。


1968年 昭和43年 ロイド館解体

1970年 昭和45年 新本館完成
1983年 昭和58年 インペリアルタワー完成(山下設計)


英語ですが、こちらのYouTube動画も貴重です。


ネットに、ライトの帝国ホテルをCGで再現したものがありましたので、キャプチャした画像を張っておきます。13分半ほどのビデオです。



日比谷通りより正面エントランス方向



正面エントランス



日比谷通りに直行する面、影からして北面でしょうか。




再び中庭。



エントランスロビーの吹抜け、光が美しいです。



食堂、柱と頬杖の装飾も凄い。今ではもはや造れません。


言葉にできないほどの空間です。



なんと壮麗な。


これらが全て失われたことに、改めて深い失意を覚えます。


トッパン印刷による下記のような再現VRもあります。




過去の愚行を弔う作業なんでしょうか、こうならないようにしていきたいものです。


◇◇

2021/6/10

再開発の概要が発表されましたけど、なんかヒドイですね。品川インターシティの再開発を思い出します。


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