チェンバロのエスファハニ(Mahan Esfahani)に、リコーダーの女王ミカラ・ペトリ(Michala Petri)、そしてヴィオラ・ダ・ガンバの女王ヒレ・パール(Hille Perl)という豪華メンバーが加わっての、バッハフルートソナタ集。
原曲はトラヴェルソ(バロック・フルート)のための作品なので、移調したり一部編曲されているようです。
https://music.apple.com/jp/album/j-s-bach-flute-sonatas-bwvv-1030-1035-arr-for-recorder/1482201348
ミカラ・ペトリは1958年コペンハーゲン生まれの世界的なリコーダー奏者です。ペトリは、リコーダーという楽器のリヴァイバルの最前線で活躍し、リコーダーの可能性を広げてきました。このバッハのフルートソナタも、1992年のキース・ジャレット!との共演の再録音となるものです(こちらも聴いてみました)。
エスファハニ自身も、チェンバロの可能性を拡大するべく、現代曲を含めて意欲的な作品を演奏しています。そういう方向性が一致しての、この盤なのでしょうか。
ヒレ・パールは1965年ブレーメン生まれのヴィオラ・ダ・ガンバ奏者。エスファハニは1984年テヘラン生まれ。
二人の大先輩といいますか、女王二人を伴っての演奏です。
もとはといえば、エスファハニのチェンバロを聴くために選んだ盤でしたが、まずはペトリのリコーダーが圧巻でした。
耳慣れたトラヴェルソ版とは、少しばかり違って聴こえます。というか、もはや別の曲といってもいいのかもしれません。それほどに、ミカラ・ペトリのリコーダーが独特といいますか、素晴らしいといいますか、演奏として完璧です。
トラヴェルソとリコーダーでは発音原理が異なります。リコーダーは倍音成分が少ない音響的特性のため、純粋でスッキリと硬質な印象になります。
しかし、ペトリの完璧な技法に、時にエキサイティングな音を聴かせてくれるエスファハニのチェンバロ、そこに低音を支えるパールのガンバが絡まることで、音楽に躍動感と生命かん、そして素晴らしい構築美を聴かせてくれます。
エスファハニの音は、時に電子楽器かと思わせるところがあるのですが(実際は古楽器と思いますよ)、それがペトリのリコーダーにもマッチしているようにも感じました。
それにしても、このトリオによるアンサンブルは見事で、そしてエキサイティングです。最後のBWV1035のグルーブ感などは、今までのこの曲に聴かれることのなかったものかもしれません。エスファハニのチェンバロ、パールのガンバも伴奏楽器ながらしっかりと主張しており、満足の得られる盤でした。
本来はトラヴェルソの曲ですけれど、これはこれで繰り返し聴きたいと思わせるものがあります。
全体的な印象としては、キースとの共演よりもこちらの方が素晴らしいかなあ。
0 件のコメント:
コメントを投稿