キリストが実在の人物であったか否かに、個人的な興味はありません。義母が読んで面白いからと読み始めたのですが、私にはいまひとつ。
とにかく本としては完成度が低すぎます。「誰が」文章を書いているのかはっきりしないといった、テキストの主体性の問題もありますが、一番気にかかるのは、学究的信頼性。それは、数多の考古学者が「無視している」という、彼らの主張の異端性にあるのではなく(筆者らは、そこに「酔っている」フシもあります)、彼らがよりどころとする「統計的根拠」。あの程度の分析では素人の域を出ておらず、化学分析も全くお粗末なもの。
ネタとして、飲んだときの話題にはできますが、真面目に信じるには、胡散臭さを全く拭いきれず。結局は関係者の熱意とは裏腹な、時間つぶしのエンタテにしかなっていないのが残念。ウソであっても、もう少しうまく騙してよといったところ。
もともとディスカバリー・チャンネルの考古学ドキュメンタリーとしての企画調査ですから、限界もあろうかと思います。実際の放映を観たならば、印象は感想はかなり違ったかもしれません。学究的価値があるのならば、別なスタッフによるもう少し真摯なフォローを期待したいところです。