国立西洋美術館で開催されている「コロー展」を観てきました。コローは美術部であった高校時代に好きであった画家の一人。その頃は、独特の水辺の風景画に惹かれていました。今回の展覧会は、コローとしては大規模のもので、しかも彼が優れた人物画家であったことも示す企画になっています。
パンフや半券になっている絵は「コローのモナリザ」と称されている作品。これと「青い服の婦人」が今回の展覧会の目玉になっています。扱いとしては、こちらの方がコローとして有名な「モルトフォンテーヌの想い出」などよりも重い扱いです。
コローの作品の魅力は、静謐さ、建築や人物造形上の揺るぎのない構築力、それと相反するかのような樹木の表現の叙情性にあります。展覧会の副題が「光と追憶の変奏曲」とあるように、コローの絵には彼にしか表現できない詩情が漂っています。
印象派のような軽さや鮮やかさは認められないものの、コローが印象派に先駆けた「眼の作家」であったことは否定できません。彼の作品からは、ひたすらに風景や人物がもつ外的美しさと憧憬と愛情が感じられます。
批判的に観ればば、人物表現については内面性までを感じさせるものではありません。風景表現においても大規模な神話的絵画においてはイメージと技術の硬直を感じます。展覧会という場で多くのコロー作品に多く接した場合、多少の退屈を感じることも否定できません。
それであっても、私にとって、コローはかけがえのない作家の一人であることに変わりはなく、この企画に接することが出来た僥倖を素直に喜びたいと思います。