2021年2月12日金曜日

米谷健+ジュリア だから私は救われたい 角川武蔵野ミュージアム

角川武蔵野ミュージアムで「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」と題する個展が開かれていました。

米谷健さんは1971年、ジュリアさんは1972年生まれの現代美術家、主な活動の場は海外にあるようです。お二人は夫婦であり、金融の専門家と歴史学の大学教授という経歴をもたれています。京都の農村で無農薬農業を実践しつつ、環境や社会問題、反原発をテーマとした作品を発表されています。




珊瑚や貝で覆われた、真っ白な異形の生き物。作品のタイトルは「Dysbiotica」。腸内細菌叢のバランスの崩壊を意味する語「Dysbiosis」からの造語。




この生き物が生きているのか死んでいるのか分かりません。作品解説によると、珊瑚は藻類と双利共生関係にあり、物理的ストレスを受けると珊瑚は白化して死滅します。作品の人型の存在にびっしりと付着している珊瑚や海洋生物は、美しいまでに真っ白です。




しかしそれが、ストレスとアンバランスによってもたらされた「美」であるとするならば、死した珊瑚らを身にまとうこの物言わぬ人型は何を訴えているのでしょうか。

「最後の晩餐」と題された作品も圧巻です。これらは塩でできています。オーストラリアのマレー・ダーリング盆地では大規模農業による過度な灌漑のために塩害が発生し、被害を防ぐために大量の塩水をくみ上げているそうです。その塩水から精製した塩を素材として用いています。



そういう背景を知らないで、この作品を見たとしても、何か違和感を感じます。一見すると精巧で美しくありながら、飽食の極みのような罪悪感、紛い物感、そしてその色合いから虚や静かな破壊を感じ、見ていて多少痛々しくあります。

米谷さんのほかの作品も、作品に込められた意味を知るとさらに深く理解できますが、それを知らないとしても、心の底に苦い棘とか澱のようなものが残される様な気がします。

これらの作品は美しくもありながら、儚く、ちょっとしたことで崩壊してしまうような、微妙なバランスの中で形を保っています。




暗い会場空間に浮かぶクラゲのようなシャンデリアも、これらは各国の原発の総発電量に比例した大きさで製作されています。シャンデリアの素材はウランガラスです。ガラスにウランを混ぜることでこの様に妖しく光を発します。



私たちの住む安心な世界が、隠された脅威のもとに形成されていることを教えてくれています。

バランスを欠き辛うじて崩壊からすることから保たれている現代社会。

角川武蔵野ミュージアムの2階、ショップ前にあるウルトラブッダも米谷さんらの作品でした。黄金になったウルトラファミリーは、闘うことを終え、座して何を見ているのでしょうか。




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