「Good to Great」というのが原題。
ドラッカーの書もしかりですが、優れたビジネス書は働くものに多くの知見や啓蒙ばかりでなく、人生に対する希望や可能性さえ与えてくれる指南書であることが多い。そこには目新しいことは書かれていないかもしれないが、現状に閉塞感を感じているならば、何かしら目を開かせてくれる言葉に出会うものです。
そんな中にあって前書の「ビジョナリー・カンパニー」(→レビュ)は目からウロコ級の極めて優れた書でしたが、本書も同様であり、ベストセラーの名の下の二番煎じやドジョウなどでありません。
ここでは本書の要旨やポイントについて言及するつもりはありません。手軽に知りたければamazonのレビュを参照すればよく、また章ごとに要約が端的にまとめられています。
私が一番感心したのは、本書のスタンスです。筆者のジェームズ・C・コリンズと今回の調査研究に携わった研究者達の膨大な尽力には畏敬の念さえ覚えます。そして、それこそが本書の大きな魅力だと思います。
前書でもそうでしたが、「自社ビルを見つける」落とし穴を避ける
という問いの立て方は重要です。ビジョナリー・カンパニーに共通する特徴を見つけるのではなく、これらの会社が本質的に違う点は何か。ほかのグループの会社と比べて際立っている点は何か
という問いを立てろと主張します。今回はビジョナリー・カンパニーの替わりに、飛躍した企業に対し同様の問いを立てて調査研究が進みます。
前書の読者からの素朴な疑問に立ち向かうため、前書の前提を一旦捨てた所からスタート、5年間に渡る徹底的な調査と討議。ともすると陥りがちなはじめにあった理論を調査によって試すか証明する方法
は取らず、データと事実にのみ準拠する姿勢、その結果から導かれた結論の重い説得力。プロセスに妥協は無く、驚くべき真剣さと熱意に打たれます。
そして、これらの活動の根本にあるのは、あふれるばかりの好奇心。
こういう質問をよく受ける。「そこまで大がかりな調査研究を進めた動機は何なのか。」的を射た質問だ。この問いの答えは一言でまとめられる。好奇心である。答えを知らない疑問をとりあげて、答えを追及していくことほど面白いことはない。(P.8)
そうなのです。だから本書は読み始めたら止まらない程に面白いのです。ビジネス書でありながらワクワクし、ドキドキし、自分の自身や所属する組織に思い巡らし、そして何かに気づきます*1)。
一方で、しかし、とも考えます。
GEの偉大な経営者であったウェルチもそうですが(→たとえばこれ)、なぜ発展すること、勝つこと、Greatになることが重要なのか。拡大することを宿命付けられた資本主義の幻影を追っているだけなのか。否と筆者は応えます。
「なぜ偉大さを追求するのか」という問いはほとんど意味を持たない。(中略)
ほんとうに問題なのは「なぜ偉大さを追及するのか」ではない。「どの仕事なら、偉大さを追及せずにはいられなくなるか」だ。
つまりそこそこの成功で十分
ならば仕事の選択を間違えている
のだと断言します。
このような疑いのない明るさをベースとしたポジティブさに抵抗を覚える人もいるでしょう。理解はしても斜に構えたくなる人もいるかもしれません。それでも本書の語ることを無視はできません。どこかで成功するとか何かを達成するということに対し、そして少しでも人生の意義を見出そうとするする人であれば、本書から何かを得られるはずだろうと*2)。
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- 気づくことの多くは、ゲンナリさせられるものばかりなのだが・・・_| ̄|○
- 逆に言うと、そういうことに全く意義を見出さない人には役に立たない、というか、そういうことに興味のない人は・・・そもそも、こういう本を決して読まないだろう。