福間洸太朗さんのバッハを聴いています。ピアノによる「バッハの音楽に忠実な編曲」作品を集めたものです。先日聞いたような、トーマス・エンコのような編曲とは趣を異にします。
https://music.apple.com/jp/album/j-s-bach-piano-transcriptions-bonus-track-version/1564287086
- アリア『羊は安らかに草を食み』~カンタータ『わが楽しみは元気な狩のみ』 BWV.208より(編曲:エゴン・ペトリ)
- コラール『目覚めよ、と呼ぶ声あり』 BWV.645(編曲:フェルッチョ・ブゾーニ)
- コラール『いざ来ませ、異邦人の救い主よ』 BWV.659(編曲:ブゾーニ)
- コラール『われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ』 BWV.639(編曲:ブゾーニ)
- コラール『主よ、人の望みの喜びよ』~カンタータ『心と口と行いと命もて』 BWV.147より(編曲:マイラ・ヘス)
- シンフォニア(序曲)~カンタータ『神よ、われら汝に感謝す』 BWV.29より(編曲:カミーユ・サン=サーンス)
- 前奏曲とフーガ イ短調 BWV.543(編曲:フランツ・リスト)
- シチリアーノ~フルート・ソナタ 変ホ長調 BWV.1031より(編曲:ヴィルヘルム・ケンプ)
- シャコンヌ ~無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調 BWV.1004より(編曲:ヨハネス・ブラームス)
- アリア『憐れみ給え、わが神よ』~マタイ受難曲 BWV.244より(編曲:福間洸太朗)
- パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV.582(編曲:オイゲン・ダルベール)
- コラール『バビロンの流れのほとりにて』 BWV.653(編曲:サムイル・フェインベルク)
福間さんがどういうタイプのピアニストかは、実は不勉強にして知らないのですけれど、このアルバムからは慈しみのような感情を感じます。音楽はひけらかすようなところや、ケレン味などからは遠いところにあって、淡々と静かにバッハの音楽を聴かせてくれます。
福間さん自身、以下のように語っています。
「パンデミックが世界を襲った2020年。先行きの見えない不安の中で、SNSを通して多くの方から「バッハ」を聞きたいというメッセージを頂きました。その頃、私自身もバッハを弾きたい想いに駆られていたのです。これは偶然ではなく、バッハの音楽が心に癒しをもたらしてくれるからに違いありません。このアルバムを聴かれた皆様が少しでも心の安らぎを感じ、慈愛の心を強くしていただけたら、私はこの上なく嬉しく思います。」
このアルバムに寄せて 福間洸太朗(ライナーノーツより抜粋)〜発売元情報
日本でもワクチン接種が加速しているとはいえ、そのワクチンそのものに対する疑問もありながら、世界がどこに「連れて行かれようとしているのか」まるで見えない状況です。そんな中でオリンピックを開催するというのも狂気の沙汰と思えなくもありません。
こういうムチャクチャな時代は、やはりバッハのような音楽を人は求めるのでしょうか。
自分はバッハに癒しとか祈りよりは、音楽としての革新性や凄さ、または激しささえを感じるのですけれど、福間さんのバッハはひたすらに優しいです。シャコンヌでさえ、ブゾーニ編ではなくブラームス編です。福間さんによると、この曲は左手のみで演奏する曲なのだそうです。
編曲者のオリジナルなアイデアがふんだんに盛り込まれたトランスクリプションも多いのですが、今回のアルバムに関しては、比較的原曲に忠実に編曲されたものをとりあげました。ですから例えば、ラフマニノフによる「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ」の組曲などは、ラフマニノフのエッセンスが強いので、あえて取り上げていません。また、コロナ禍における癒しや祈りを念頭におき、みなさんの心に寄り添える作品を弾きたいと考えました。そこで、前半にはアリアやコラールなどの小品を配置しています。 (ONTOMO)
上に紹介した福間さんのインタビューには、アルバムに込めた思いやピアノ演奏技術に関する話題もあり、一読の価値があります。折に触れて繰り返し聴きたいアルバムです。
(参考)
- ピアニスト福間洸太朗——ファンとの交流から発想! 人に寄り添うバッハ編曲作品集 ONTOMO 2021.6.25
- トーマス・エンコのBach Mirror Clala Flala 2021.6.25
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