2021年6月22日火曜日

シルヴェストロフの交響曲第7番を聴く

NAXOSから発売されている、シルヴェストロフの作品集ですが、カンタータ第4番と交響曲第7番は世界初録音とのことです。



  1. ナイチンゲールへの頌歌 …オーケストラ版世界初録音 
  2. カンタータ第4番 …世界初録音
    Ⅰ.二部作-1 シルアンの歌
    Ⅱ.二部作-2 牧歌
    Ⅲ.二つの歌-1 夕べ
    Ⅳ.二つの歌-2 わが魂は天の蒼に包まれた
  3. ピアノ・コンチェルティーノ - ピアノと小オーケストラのための
    Ⅰ.Preliudium
    Ⅱ.Pastorale
    Ⅲ.Serenade
    Ⅳ.Postliudium
  4. 詩と音楽の瞬間
    Ⅰ.パウル・ツェランの詩に
    Ⅱ.メロディ
  5. 交響曲第7番 …世界初録音


まず「交響曲第7番」を聴いてみました。この作品は2003年作曲、約17分ほどの単一楽章で構成されています。

最初こそ「現代音楽的不協和音」で激しく始まりますが、すぐにシルヴェストロフ的な甘美かつ抒情的な主題が現れます。その様は、泥の中に咲いた蓮の花のようで、あまりの音楽的風景の違いに耳を疑うほどです。しかし、その主題も、ひたすらに不安なく美しいというわけではなく、変容を含んだ和音というかメロディに感じられます。中間部で再び打楽器などを伴う、不協和の世界に引き戻されるものの、それは最初に聴かされた世界とは明らかに異なった場所のようです。音楽は、この異なる場所を行きつ戻りつするかのようで不安定な進行が続きます。音楽的は底まで下りたかと思ったときに、シルヴェストロフ的なメロディがピアノによって奏でられ、一種の救いのような気持になります。しかし、その音も「いまそこから」鳴っているようには聴こえません。もはやかつての追憶や回顧なのかもしれません。そのナイーブな感情が結晶化するかのような煌めきを感じさせながら、音楽は徐々に静かに閉じていきます。その閉じた先はどこなのか。というよりも、その追憶を含めた世界はどこに行ってしまったのか。逆に聴いている自分は、ここという世界に取り残されてしまったのではないか、最後は風の音しか聞こえません、なんだか世界の終わりを見てしまったかのような音楽の終わり方です。

なかなか分かりやすい曲ではありません。この曲からどのような感情を抱くのか人それぞれでしょう。音楽解釈的にはどうなのか、ほとんど解説もレヴュウも見つけられませんので、聴いてみるしかありません。

「ピアノコンチェルティーノ」にも似たような感覚を覚えます。非常にメロディアスで口ずさみたくなるようなメロディーが挿入されていながらも、どこかそれとは裏腹な世界が見え隠れします。

Wikipediaには

単純な調性音楽に帰するのではなく、なにかしらの思い出をフラッシュバックさせるテクニックは、かつての前衛時代の感覚とは完全に切り離された代物であり、同一人物の作と認識するのが難しい。(リンク

とありますが、二つの音楽は完全に切り離されたわけではなく、音楽的にも二面性を持っているようです。特にこの曲の場合、4楽章のPostliudium(後奏曲)の終わり方がコワいです。馴染みのあるメロディが、いつしか弦の掠れた音に変容し、そのまま不協和のまま解決せずに音楽は終わります。別の世界に連れていかれてしまったかのような感じです。

ナイチンゲールへの頌歌とカンターターは声楽を伴う作品のため、Apple Musicのストリーミング配信だけでは歌詞がわりません。下記を参考にゆっくりと聴いてみます。

かように、シルヴェストロフの最近の音楽も、単にヒーリング的音楽だけではない面をこのアルバムは聴かせてくれました。

以下にアルバムの輸入元情報を掲載しておきます。

「ポスト・モダニズム」の作曲家として伝統的な調性や旋法を用い、ゆったりとしたテンポで聴き手の望郷や回顧の念を呼び起こす音楽が人気が集めるヴァレンティン・シルヴェストロフ(1937-)。しかし、彼がこのような作風に転向したのは1970年代以降であり、それ以前にはマデルナに大絶賛されるほどの前衛的な作品を書いていました。このアルバムには3曲の世界初録音を含む、シルヴェストロフの80年代以降の作品が収録されています。冒頭の「ナイチンゲールへの頌歌」はジョン・キーツの詩(ロシア語訳)を用いた、アルバム中最も「先進的な」響きを持つ作品。もともとは室内オーケストラの伴奏による歌曲でしたが、シルヴェストロフが試行錯誤を重ね、この形に仕上げたものです。2014年の「カンタータ第4番」と2015年の「ピアノ・コンチェルティーノ」には、いくつかの共通する素材が用いられています。2003年の「詩と音楽の瞬間」にはパウル・ツェランの詩が断片的に用いられており、聴き手のイメージを喚起しています。同じく2003年に書かれた「交響曲第7番」も、冒頭こそ不協和音の嵐が続くものの、いつしか曲は落ち着き、失ったものを追憶するかのように静かに消えていきます。

ナクソス・ジャパン

発売・販売元 提供資料 (2020/07/07)

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