満を持して発売になったクルレンツィスのベートーヴェン交響曲第7番です。衝撃とも言える第5番が出たのが2020年、次は7番と聞かされて、ファンとしては相当に待ち遠しかったのではないでしょうか、録音は5番と同様に2018年です。
https://music.apple.com/jp/album/beethoven-symphony-no-7-in-a-major-op-92/1553729421
出だしからマッシブな音を聴かせてくれます、テンポは中庸といったところでしょうか。
全体を通して、よくまとまっているとは思うものの、一聴した感想としても、Amazonのレビュウを読みましても、どうも中途半端感が否めません。この曲に求める興奮と高揚が少ないというのが、その理由です。
しかし、私たちは、この曲に過度の期待を寄せ過ぎているのではないかとも思うのです。かつての人気漫画「のだめカンタービレ」をベースにしたドラマや映画での刷り込み、C・クライバーの華麗なる演奏、ワーグナーが「舞踏の聖化(Apotheose des Tanzes)と絶賛したことなども含めてでしょうか。
心沈めて聴いてみますと、抑制の取れた演奏の中にも、ハッと驚くフレーズやリズムが見え隠れしたりしてきます。オケの重心も低い。非常に着実な堂々とした演奏です。クルレンツィス自身、以下のように述べているそうです。
この曲を読み解くカギは音楽の活力と光を見つけ出すこと。それは新たな生命の躍動、矛盾だらけの宇宙に誕生した細胞に向かう旅
確かに、この曲には混沌から上昇し光に向かうようなイメージがあります。しかし、クルレンツィスの演奏は、最初に書いたの印象のように、非常によくまとまっているが故に、いや逆に逸脱や乱れがないため、狂騒や予定不調和も生まれていないようにも感じます。
各楽章の速さの指示も、Poco sostenuto - Vivace、Allegretto、Presto、Allegro con brio となっていますので、形式的には第3楽章の方がスピード感があるのですね。
過去の名演やイメージだけではなく、第5番の印象も手伝ってか、演奏者と(一部の)リスナーの期待値のミスマッチを感じてしまいます。いやいや、ですから、先ほども書いたように、過度の期待を演奏に求める事自体が邪道なのだと思い直しました。
演奏そのものは申し分のないものだと思いますし。
最後に一つだけ付記しておきます。クルレンツィスの録音には、木管楽器奏者のキーの音がパタパタ、カタカタと入っています。これは、普段の演奏会場では、おそらく殆どの人は決して聞くことのない音です。これを敢えて入れるということは、録音のバランスや基準も指揮者の位置をベースとしているのか、あるいは、録音芸術と割り切ってのことなのでしょうか。
テオドール・クルレンツィスとムジカエテルナによるベートーヴェンの交響曲シリーズ第二弾がついに発売決定。交響曲第7番を2021年4月にリリース! 2020年、ベートーヴェン生誕250周年という記念の年の春にリリースされたテオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナという注目のアーティストたちによるベートーヴェン:交響曲第5番『運命』は、世界中で大きな話題となりました。本来、それに続いてその年の秋には第二弾となる交響曲第7番のリリースも同時にアナウンスされていましたが、世界各地を覆ったCOVID-19禍による影響もあったのか、残念ながら発売日は延期となっておりました。
しかし、ついにその時はやってきたのです。
「舞踏の神化」とワーグナーをして言わしめた交響曲第7番が、ついに2021年4月のリリースが決定いたしました。
2018年8月にウィーンのコンツェルトハウスで録音されたこのアルバムは、ロシアを拠点に活動する音楽家たちが作曲家の生誕250周年を記念して行った意義深いアルバムであり、2020年4月にリリースされた交響曲第5番『運命』と同様に重要なものになることは間違いありません。ドイツ「Die Welt」紙は「21世紀の第5番」と評し、イギリスの「The Times」紙は「この曲のスコアに組み込まれた革命的な力を新たに示唆するために見せかけの親しみやすさを吹き飛ばす、扇動的な記録のひとつ」と評しています。
クルレンツィスは、本アルバムのブックレットの中でベートーヴェンの交響曲第7番について「かつて書かれた交響曲の中で最も完璧な形式をそなえています」と語り、その構造的な完成度を、古典建築の頂点であるアテネの古典と比較しています。
交響曲第7番の録音は、2021年4月9日(日本では4月7日)にCDとデジタルでリリースされる予定です。2021年クラシック界の最大の話題となることは間違いないでしょう。
日本盤のみ高品質Blu-specCD2仕様。(メーカー資料より)
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