マイケル・ムーアとは社会派のドキュメンタリー映画監督件、ジャーナリストとしてアメリカでは有名な人だ。最近では「ボウリング・フォー・コロンバイン」という映画が日本でも公開された。これはカンヌ映画祭で55周年記念特別賞を受賞した作品だ。マイク片手にアポなしで突撃インタビューをするというスタイルは彼の定番であるらしい。
知ったかぶりして書いているが、そういうことはつい最近知った。残念ながら彼の映画は観ていない。
だから、この本の表紙と、くだけた文体に騙されてはいけない(原書はこちら)。内容は非常に真面目で刺激に満ちている。「簡単に言えば、あなた(ブッシュ「大統領」)はアル中で、泥棒で、おそらくは重犯罪人で、とトガメなしの脱走兵で、泣き言野郎です」
という調子(訳)の現アメリカ「大統領」ジョージ・W・ブッシュ批判は留まるところを知らない。大統領にカッコ付なのは今でも選挙に勝ったのはゴアだとムーアは思っているからだ。
いやいやそればかりではない、ブッシュの側近達の紹介やブッシュ「大統領」が就任依頼実施した政策の数々、前大統領クリントンが成し遂げた政策の数々が羅列されているが、もしそれが本当だと言うのならアメリカも救い様のない国であるということが(今更ながらに)分かって、ゲンナリしてしまうのだ。
読んでない方で注意してもらいたいのは、この本は「アメリカは世界の保安官たりたがる」「どこの国でも自国と同じような環境を作ってしまう」「いつも自分が正しいと思っている」というような、アメリカ人観を書いた本ではないということだ。ひとえにアメリカの好きな作者ムーアが、アメリカに幸せに住むためにはどうしたらいいのか、というテーマに真剣に向き合った本だ。
アメリカの現政権共和党も、共和党と政策の違いを全く示せなかった「脳死寸前民主党」
も、彼らはアメリカ中での10%の富裕層が利益になるような政策を、世界中からの反対があろうと進めていることを糾弾しているのだ。「アホでマヌケなアメリカ白人(Stupid White Men)」とはアメリカ白人全体のことではなく(ましてや白人以外のアメリカ人のことでもなく)まさに彼らのことを指している。
「満ちたり者に禍ひをもたらす祈り」
は痛烈だし、本の最後に書かれた「人生の目的は、ただ漫然と生きてゆくことだけだなんて言うな。「ただ生きているだけ」というのは、臆病者の生き様だ。あなたには、市民として生きる権利がある。悪いのはあのバカでマヌケな白人どもだけだ。俺たちは、奴らに対して圧倒的に数多くいる。その力を使うんだ。あなたには、より良く生きる権利があるんだから。」
という主張は強い。それほどにアメリカは貧困者やマイノリティーに対する差別や迫害が(全くないようなフリをしながら)根強いということを思い知らされる。
この本を読むと、アメリカより日本の方がよっぽどマシなのではなかろうかという気になる。私たちはイチローやマツイの行くアメリカしか知らない。マイクロソフトとハリウッドとMTVの世界しか知らない。日本では少なくも民主党代表に投票できなくなるように、ある日突然に選挙権が剥奪されることも今のところはないのだから・・・
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