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2015年3月7日土曜日

高村薫 冷血(下)を読んで

時間をかけてやっと読了。
読みずらい作品ではなかったが、かと言って解決が得られたかと言えば否
作者か主人公の合田か、煩悶だけが残される形となった。
それでも、続編はないのだとすると、今の段階での一定の回答であろうか。

徹底的に言葉を信じ、言葉によって表現を試みてきた筆者が、曖昧で実態のない、犯罪の動機に踏み込んでみる。そこには闇なのかなんなのか、何も見当たらない荒野があるだけ
それでも執拗に言語化し、わからないものがどうであったのかを描こうとする。

まるで太陽を曳く馬に出てくる抽象画のような、白々とした風景が広がる。

実態のないわからない存在であった、犯人の井上が、かなり高度な手紙を書き始めるのには、若干の違和感を覚えなくもない。これではかなりの知性の持ち主ではないか。
何も考えないヤンキーのそれではない。

あるいは死刑囚となった者は、みながこのような、なんらかの形で考えさせられる
文章を認めることができるようになるということなのか。

まだ、色々考えなくてはならない。
現代を言葉に表しているということなのか。
この混沌と無関心と感情あるいは刺激だけが前面に出てきている幼稚化した日本というものを。
分裂症でも精神錯乱でもない、そういうところに落とし込まないで、わからない世界をどこまで理解できたか。

合田はもはや刑事の領域を超えており、どこに向かうか。