2020年11月17日火曜日

米大統領選と中国戦略

 NEWSWEEkの記事より

「中国が本心ではトランプ再選を望む理由」として、ラッシュ・ドシ(ブルッキングス研究所国際戦略イニシャチブディレクター)の論説

中国にとっては、破壊王=アメリカの衰退を加速させるトランプは、短期的には中国に敵対的だが、長期的には都合がよいとの見解。中国は現在を「100年に1度の大きな変化」ととらえており、中国とアメリカのパワーバランスが変化するとみています。トランプが米主導の同盟システムを破壊したおかげで、世界秩序は単一の超大国と複数の大国から、2つの超大国と複数の大国という形に変わりつつあります。習政権は、さらにすすめて中国がアメリカに代わって世界のリーダーになろうとしているのではないでしょうか。

米国覇権から中国覇権への転換。中国の拡大路線。それは、いちはやく抑えたコロナだけではなく、その後の対策、デジタル通貨の推進、RCEPなどの貿易圏、東シナ海やインドなど国境付近での軍事力行使などを含めて、中国は拡大路線を止めようとはしないでしょう。「アジアの盟主」を超えてくる可能性は否定できません。

トランプ大統領は、中国と敵対するとみせかけて、米国覇権主義を捨て多極化することを望んできました。トランプは表向き多極主義ではないので、隠れ多極主義と田中宇は主張します。結果的にアメリカの国際的な力を弱めたのは確かです。何のため、と考えれば、多極化したほうが「儲かる」資本家を代表しているだけのことではないのでしょうか。かといって、中国だけの一人勝ちを推進しているわけではない。民主党やバイデンのようにトランプが中国とつながっているという話はあまり聞きません。

バイデンはトランプと真逆の政策を取るでしょうが、逆に民主党は中共の傀儡であるとする説もありますし、内向きで分断された沈みゆくアメリカを、そうではないとする方向にもっていくでしょう。要は、グローバリズムの推進という点では方向性が一致していると考えてい良い。

一方、同じNEWSWEEKの記事で、「中国とロシアがバイデンを祝いたくない理由」としてジョン・デニ(米陸軍大学校戦略研究所研究教授)が寄稿しています。

サマリーは、多国間主義で同盟国と手を組んで対抗していくるバイデン新政権は、強硬だが孤立していたトランプより手ごわいライバルとなるとする見方です。バイデン政権は多国間主義を取り、同盟諸国を弱体化させるのではなく、逆に強化し、同盟諸国すべての発展を追求しながら、ヨーロッパとアジアの大きな貿易摩擦問題を早期に解決しようとするだろうとみています。多国間主義は同盟国とのパートナーシップの強化につながり、アメリカの比較優位を高める、結果としてロシアや中国は同盟国がいないので孤立するといいます。

逆に考えると、バイデンが多国間主義をとったとしても、アジア諸国をはじめ日本も、米国と中国との付き合いのどちらかに絞るというのは戦略的に望ましい方向ではないと考えるのではないでしょうか。ジョン・デニ氏の見解は、主人公がアメリカであり、その論理の枠を出ていません。貿易依存度を考えると、アメリカにも中国にも喧嘩は売れない状況の中で、パワーバランスを考えていく方向になるでしょう。ロシアは中東諸国との関係もあるし、インドの出方も問題です。

またNEWSWEEK 六辻彰二氏の論考、「中国に対抗できるのはトランプだけ」の勘違いーバイデンの戦略とは、によりますと、トランプが自由貿易や国際秩序を否定しアメリカ自身が打ち立てたルールを拒絶したことは、アメリカ一国主義、超大国としての立場を降りると宣言したに等しい。バイデンは、アメリカが世界をリードすると強調しており、アメリカが超大国の地位にとどまることを目指している。バイデンの方針は国際主義。真逆の戦略だが、これは大方の見方と一致しています。その中で、中国包囲網を考えた場合、六辻氏は鍵となるのが途上国に対する戦略であるとみています。トランプは途上国に対しても、中国のリードを許してきた。バイデンはトランプが軽視し、反感さえかっていた途上国外交の修復を意図していくだろうとみています。

とはいえ、彼の見方も、中国包囲網の形成、中国を敵対的な国とみています。すなわち、中国の覇権主義に反対の立場からの見方です。

このようにみてくると、トランプは結果的に米国のパワーバランスを崩し中国の台頭を許した。民主党バイデン政権が、本当に中国と敵対的あるいは中国の覇権を抑える方向に行くのかどうかというのがポイントなのでしょう。

国際情勢には、とんと疎いので、ここまでです。

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