アレクサンドロ・カントロフのアルバムを聴いています。本アルバムの収録曲は、バルトークとリストが2019年9月にパリのルイ・ヴィトン美術館で、ブラームスが2020年1月にフィンランドのタピオラ・コンサートホールで録音されたものです。
選曲はなかなか凝ったものです。ブラームスとバルトーク、そしてリストの「ラプソディ(狂詩曲)」に、ブラームスのピアノソナタ第2番を挟むという構成です。
ブラームスの第2番のソナタは、自分的にはあまり親しんでいる曲ではなく、アルバムを何度か繰り返し聴いています。この作品は、ブラームス1852年、彼が19歳の時の作品です。曲は1854年に改訂されクララ・シューマンに献呈されてます。ハイドンやベートーベンの影響と、ロマン主義な影響が未整理のまま表現されながらも、ブラームス独特の感性や演奏技巧が表現されているとのこと。
振幅も大きく聴きどころも満載なのですが、ベートーベンのピアノ・ソナタのように、素直に曲の中に入り込むことが難しいと感じる作品です。若きブラームスが書いた本作は、かなり野心的に聴こえ、彼の迷うような情念が表れているような曲といえるのかもしれません。この曲についてはGRAMOPHONEにカントロフとのZoomインタビューの記事がありますので、そちらを参照してもよいかもしれません。
バルトークのラプソディは、バルトーク23歳、最初期の作品で、ロマン主義的な色彩が色濃い作品、演奏時間も20分と結構長いです。ハンガリー音楽の伝統にのっとっており、リストの影響もられるヴィルティオーゾ的な曲。ラストに向かい切ないほどの抒情性に溢れた音楽になっています。最後のリストのハンガリアンラプソディからは第11番イ短調が選ばれています。
こうして曲目を並べてみますと、カントロフがある意思と拘りをもってアルバムを構成していることが朧気ながらに分かってきます。若い時代であるがゆえにできることを、彼なりに考えて実現しているのかもしれません。
ラプソディを集めたということ、あまり型に捕らわれず即興的な曲でありながらも、全体を通しては、ピアノ音楽というものに対するリスペクトが存在する。そして曲の持つダイナミズムや美しさを余すことなく伝えてくれる技量。そんなものを聴きながら感じました。
- ブラームス:ラプソディ第1番ロ短調 Op.79-1
- ブラームス:ピアノ・ソナタ第2番嬰ヘ短調 Op.2
- バルトーク:ラプソディ Op.1
- リスト:ハンガリー狂詩曲(ラプソディ)第11番
(参考)
- アレクサンドル・カントロフ/ブラームス、バルトーク、リスト HMV
- Inside Brahms’s Piano Sonata No 2 with Alexandre Kantorow GRAMOPHONE
- ブラームス :2つのラプソディ Op.79 ピティナ・ピアノ曲辞典
- ブラームス :ピアノ・ソナタ 第2番 Op.2 嬰ヘ短調 ピティナ・ピアノ曲辞典
- バルトーク :ラプソディー(狂詩曲) Op.1 BB 36a Sz 26 ピティナ・ピアノ曲辞典
- リスト :ハンガリー狂詩曲 S.244 ピティナ・ピアノ曲辞典
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