村上龍も坂本龍一も絶賛しているので、どんな本なのかと読んでみた。対象は学校教育で一通り英語を学んだものの、全然英語が理解できなかったという人向けという感じの本である。
かく言う私も、今の英語力ときたら覚えている単語数ときたら中学生並み、小説やインターネット英語どころかCDのライナーノーツさえ満足に読めないというナサケナイ英語力。しかし、この本を読んで、「A→B」という文型(いわゆるSVO文型)を見つけろということは、高校1年の文法の授業で叩き込まれたことを懐かしく思い出したものだ。動詞を見つけたら見失わないように、逆三角形でシルシを付けろと教師は繰り返していた。あの頃からさぼらずに真面目にやっていれば、もっと英語に親しんでいたかもしれないなあ、と思う。
さて本書だが、丁寧に最後まで読み通すことで、たぶん中学2~3年生程度の読解力を身につける基礎、あるいはきっかけをつかむことができるようになっている。斬新なのは、文法を先に書いた非常に簡単な「A→B」というコアを中心に、難しい文法用語を使わないで解説している点にある。特に日本人が苦手な前置詞(筆者は「接着剤」という言葉で説明する)に関する最後の説明などは、なるほどと思わせるものがある。ここだけでも読む価値があるのではと思う。
ただし、筆者も書いているように、厳密に文法などを身につけている人から見ると、違和感を覚えたり、当たり前過ぎる内容と感じられるかもしれない、何を今更と。それでも、筆者の経験に基づいた『「英会話」というジャンルも「ヒアリング」というジャンルも存在しない』『英語は英語なのです』という主張には同意するだろう。中学から高校卒業までの6年間(あるいは大学を含めて10年間)『ほとんどの学生は一冊の本も読み終わりません』という指摘も、改めてされると不思議なことだと思い知らされるのだ。
彼女は、英語を習得するには『まず「読む」こと』という。沢山読むことで、英語としてのストックが蓄積され、総合的な英語力が付くのだと指摘する。英語を使えるようになるためには、『基本はとにかく「溢れるまで貯める」こと』だと説く。その「読む」ことの基本中の基本ルールを示したのが本書というわけである。
この本を読んだからといって、すぐに英語力がつくわけでもなく、これをきっかけにじっくりと時間をかけて英語の本に接して欲しいというのが筆者の願いのようだ。中学生も3年生くらいになればこの本に接することを薦めても良いと思う。
問題は、この本を読んだ後に接する英語なのだが、考えてみれば中学高校と、そのレベルに応じた面白い副読本というものが少なすぎると思うのは私だけだろうか?
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