イマジナ アントニオ・カルロス・ジョビン
11月のある日 レオ・ブローウェル
想いのとどく日 カルロス・ガルデル
わが愛のミロンガ ロレンツ
小麦のダンス アルベルト・ヒナステエラ
波 アントニオ・カルロス・ジョビン
マズルカ第2番 マヌエル・ポンセ
はちすずめ エルネスト・ナザレ
黒いオルフェ ルイス・ポンファ
パリャーソ(道化師) エグベルト・ジスモンテ
モコヴィの地で アリエル・ラミレス
チキリン・デ・バチン アストル・ピアソラ
アリア~「ブラジル風バッハ第5番」より ヴィラ=ロボス
歌と瞬間 ミルトン・ナシメント
白い道 アントニオ・カルロス・ジョビン
高木綾子(fl) 西脇千花(p) 古川展生(vc)
録音:2000年12月5,11~14日 日本コロムビア第1スタジオ COCQ-83501(国内版)
クラシックのHPであるが、このCDを紹介することに全く躊躇はない。高木綾子ファンならば、是非とも聴いてもらいたいCDである。彼女の魅力が十分に詰まった一枚である。クラシック系ではないからと敬遠しているならば、もったいないことだと思う。
昨年12月に発売されたものだが、新譜の「Air Bleu」を聴いてからこのCDを聴くと、雰囲気の違いと、なんとも言えぬ心地よさに驚かれることだろう。「Latin America」というタイトルの示すとおりラテン音楽を集めた音楽だが、ラテンの熱狂的よりも包まれるような優しさと暖かさに満ちた音楽が展開されている。やさしさと、生暖かい空気に乗って漂う色香と哀しさのなんと素晴らしいことか。
選曲はスローな曲がほとんどである。それはサブタイトルが「南の想い」と付けられていることを考えると、彼女の意図がくみ取れるように思える。どちらかというと、アンニュイで気だるげな雰囲気を漂わせ、南のぬくもりに満ちた皮膚感覚を彼女のふくよかな笛の音は伝えてくれるのだ。どこかのリゾート地のベランダで、ゆっくりと沈む太陽を眺めるような、あるいは、ほてりに似た熱狂を海からの風でそっとなで冷ますような、そんな感じだ。
5曲目の「わが愛のミロンガ」や9曲目の「はちすずめ」はアップテンポの曲だが、その愛嬌とリズム感の見事さ。こういう曲を吹いても、彼女が吹くとあざとさやわざとらしさがなく、いかにも自然な音楽が聴こえる。そうなのだ、ここが彼女の笛の魅力なのだ。そして、きらびやかな音の奥に一瞬垣間見える情念とデモーニッシュな美しさ。女神が笑いながらも仮面の奥に別の顔を隠しているような、そんなぞっとするような音が時々聴こえるのは気のせいだろうか。
8曲目の「マズルカ第2番」も、どこかで耳にしたことのあるような懐かしさを持った音楽。ひとつも人を攻撃せずあおることもしない。それでいて音楽が心のひだの中に染みてゆくのを感じることだろう。ざらついて干からびてしまった部分を、そっとなでさすり柔らかくほぐしてゆくような感さえある。とは言っても、今流行りの癒し系とかヒーリングというくくりはしたくない。
10曲目の「黒いオルフェ」は、これもブラジル音楽としては有名な曲で、聴けばあの曲かと思われる方も多いだろうが、ここでの歌心のあでやかさときたら言葉にしようがない。
14曲目の「ブラジル風バッハ」、ヴィラ=ロボスの名曲をどう吹くのかと一番の楽しみであったが、このかなしさのなかのやさしさ、涙をふくんだ微笑みの表現(それがこの曲のテーマかどうかは知らないが)、切羽詰った高音での響きはなどなど、これだけでも聴く価値があると断言しておこう。
この盤では、彼女の超絶的なテクニックは抑え気味であり、「Air Bleu」や「Gentle Dreams」に聴かれるような、息を呑むような迫力や切り込んだ音楽は聴かれない。むしろというか当然というか、彼女は唄うことに徹している。それも、べたべたと情感を込めて唄うのではなく、あくまでも自然にあるがままに、それゆえに先に書いたように素直に心の底まで音楽が届いてしまう、素晴らしきフルートの歌姫といえよると思う。
15曲目の「歌と瞬間」もよい。チェロとの掛け合いが絶妙。もう、なんてったっていい。
(うーーん、なんつーか、ベタ褒め状態だなあ・・・。実のところ、私はこの盤も昨日の盤も知り合いから借りてレヴュを書いている、ちょっとあんまりだな。今度の休日にきちんと買うことにしようっと ^_^;;;)
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