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2002年3月2日土曜日

瀬尾和紀/L.ホフマン フルート協奏曲全集 第1集


L.ホフマン Leopold Hofmann
フルート協奏曲 ト長調 (Badley G2)
フルート協奏曲 ニ長調 (Badley D1)
フルート協奏曲 イ長調 (Badley A2)
フルート協奏曲 ニ長調 (Badley D6)

指揮:ベーラ・ドラホシュ
演奏:ニコラウス・エステルハージ・シンフォニア
フルート:瀬尾和紀 録音:1999.11 ブタペスト フェニックス・スタジオ
NAXOS


音楽雑記帳で瀬尾和紀を以前取り上げた。Naxosに録音した演奏があるというので、CDショップに行くたびに探していたが、やっと見つけることができた。L.ホフマンのフルート協奏曲集である。これは瀬尾のNaxosへのデビュー盤であるとともに、ホフマンのフルート協奏曲全集の録音としては世界初のものらしい。

L.ホフマン(1738-1793)という作曲家は馴染みがない。CD紹介によると「ハイドンと同時代にウィーンで活躍した名職人」とある。当事のウィーンで、おそらく一番ポピュラーで成功した作曲家であるらしい。さらに解説を読み進めると、D1のニ長調協奏曲は長らくハイドン作と考えられていたらしい。ホフマンは多くの室内楽とともに13のフルート協奏曲も書いたと伝えられている。残念ながらそのすべてが現存しているわけでも、曲について分かっていることも少ないとのこと。

早速聴いてみたが、冒頭から華やかな管弦楽の音が響いてくる、よき宮廷時代の音楽だ。「優雅で上品、そして快活」「極上の耳の御馳走」とCD紹介に書かれるのも納得である。確かに毒もなければ「罪もない音楽」だ。でも、日々の生活や仕事に疲れきったときには、このような音楽を聴くことで再生する何かがあることは否定できない。ヒーリングというのとは少し違う、体の芯の方に染みてゆくき、何かが確実に活性化される。

瀬尾は、その言動などから誤解を招くことも多いようだが、フルートの実力は既に充分なものを身につけていると思う。さらには、彼独特の硬質かつ精緻な雰囲気が、音や音楽に個性として現れているように感じる。Naxosの初録音も、なぜ18世紀のホフマンの音楽なのかと考えてみたが、ホフマンの世界初の全集盤ということに彼の自信と意欲が現れているのかもしれない。

ここで聴かれる瀬尾の音はクリアだ。そしてある確信をもって奏されるさまは、その音の出だしから惹きつけられる。装飾音符の正確さや音の伸びやかさなどは、聴いていて清清しい思いがする。音楽に生きと若さのようなものを感じるが、それは瀬尾の音楽家としての若さということではない。ストレートに音楽を表現している分、アクやクセがなく、淀みなく音楽が奏されるさまは清流の透明な水で口を漱ぐかのような快感を伴うものだ。カデンツァもそんなに長くはないが、聴きごたえのあるものだ。さりげなくはさまれる名人芸には心から静かに拍手を送りたい。

ただ、それがホフマンの音楽性なのかは分からないが、きらびやかにして天上にも上るかのような至福にも似た華やかさや、逆に至福の翳として暗さなどは期待できない。それをして音楽的な深みがないと言うつもりはない。逆に素直な屈託のなさゆえに身構えずに聴くことができる。それ故に当事は万人に受けしたのかもしれない。瀬尾のフルートはそういう、曲の持つ性格までも端的にあぶりり出しているようである。

最後に付け加えるが、バックのオケも悪くない。こういうCDを1000円以下で提供しているのだから、Naxosというのはやっぱり侮れない。第2集も発売されているはずなので、そのうち入手しようと思う。

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