2003年5月11日日曜日

安藤忠雄展 2003 再生-環境と建築

東京ステーションギャラリーで開催されている安藤忠雄展に行ってきた。安藤忠雄氏はコンクリート打放しのギリギリにまで凝縮された建築美で知られる世界的に活躍する建築家である。

私は建築設計などが専門ではないため、彼の建築について知ることは今でも少ない。しかし、それでも彼の建築の魅力は何だろうかと考えると、数年前に彼の作品巡りをしたときのことを思い出す。関西を中心に、姫路文学館や直島コンテンポラリーアートミュージアム・アネックスなどを見学しのだ。

彼の作品はそれでも少しは写真などで見知っていたものの、実際にその空間に立ったときの驚きと感動は強烈であり、今でも忘れがたいものとなっている。

ここで建築のデザイン論とか安藤建築について、拙い意見を述べる気はないのだが、そのとき確かにデザインのもつ力というものを如実に感じた。建築でデザインを云々する人の中には、自己満足に終始してしまい、説得力を持ち得ないものを主張する人もいる。そういうものは得てして、出来あがった後の評判は芳しくない。一方で、彼の建築からは、ある種の普遍的な力を感じたものだ。何故そこにそのディテールなのか感じ取ることができた。彼のデザインに打ちのめされたと言っても良い。

建築は「作品」とよく言われるが、決して棚や壁に飾るような芸術作品とは違う。それは用途をもった空間と生活や様式までも設計しているものだ。だから、現代美術におけるインスタレーション作品とも一線を画さなくてはならないのだと思う。 彼の作品が、そういう意味から使われ続ける建築足り得ているかは、彼の作品群がそれを証明しているかもしれない。

パンフレットの作品模型は2001年10月、国際コンペで参加の決定したフランスの「ピノー現代美術館」。チケットのスケッチは社会問題ともなった青山同潤会アパート建替え計画だ。直島プロジェクトにおいて、あるいは同潤会アパートにおいて、建物を地下に埋設し「見えない建築」を目指したということは、環境に配慮した建築計画だろうが、ガラスの多用や見えない建築というコンセプトは何も安藤のオリジナルではない。また、意外かもしれないが、安藤氏の作品は東京には多くない。東京が「建築無法時代」とも言われるほど空前の変貌を経験しつつあり、あまたのデザイン要素が氾濫している中にあって、安藤建築が東京にどのような楔を打ち込むのか興味がつきないところだ*1)

なお、本展示会にはイロイロな種類の人が訪れていた。それこそ老若男女入り乱れてという感じなのだ。改めて彼の人気の広さを思い知った次第。また、本展示会の情報を私に教えてくれたEさんに感謝。

  1. (追記)以下BBS書きこみより

    安藤忠雄ですが、HPに書いたものは堅苦しくて面白くないですね。

    展示会には写真やビデオのほか、ドローイングや模型も多く、 建築知識のない人にも楽しめる内容でした。

    建築家のドローイングや図面は(自分で書いているかどうかは別にして) そのまま額に入れて飾れるようなデザインのものがあるのですが、 まさに安藤のドローイングはそれで、図面的には緻密というわけでは全く ないものの、建築のイメージを伝えるという意味からは、なかなか イマジネーションに飛んだものだと感じました。

    また、彼は常にアイデアが吹き出ているようで、ホテルやらレストランの ナプキン、または飛行機の半券などにまでエスキスを描いているのには 驚かされます。 ��画家ぢゃないから、それが号いくらという値段にはなりませんがね)

    かの丹下健三が赤坂プリンスのデザインを決めたときも、どこかのホテルの ナプキンかマッチの箱に「こんな形」とかぐちゃぐちゃ描いたのがオオモト 案だと聞いたこともありますし。マッチの裏のぐちゃぐちゃを形にしてしま うところが、まあ大家たる所以ですかね。

    模型もなかなかかっこよくて、光の入り方や空間の意外性などが良く分る ものでした。特に同潤会アパート建替え計画は、表参道の並木より建物高さ を低く抑えるため地下階が深いんですよ。そのため、地下にまで自然光を入れ るため、アトリウムを囲むように店舗と住宅を配置しているのです。そういう 仕組みがやっぱり模型の方がよく分る。

    アトリウムを広くとって大階段を設置するという計画は、原広司の京都駅でも おなじみですが、それが彼のモチーフとなってフランスのピノー美術館や 同潤会アパートでも見ることができます。これは計画上の模倣というよりは ボキャブラリーと判断すべきでしょうが。

    マンハッタンのペントハウスという計画は、既存の超高層ビルの屋上と、 中間階にガラスの箱を貫通させた計画ですが、非常に斬新なアイデアで、 模型を見てうなっちゃいました。 イメージ的には最近竣工した上野のこども図書館の手法ですね。保存建築に 新たな表層や空間を加えることで、再生するというものです。まあ、これも 安藤だけのモチーフではありませんが。

    マンハッタンのグラウンドゼロプロジェクトは、建物ではなくモニュメント を設計したという点で注意を引きました。現在、あそこはWTCを上回る 超高層計画がコンペで決まりましたが、安藤のような解決策もありかなとは 思ったものです。

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