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2003年11月13日木曜日

ヒラリー・ハーン/バッハ バイオリン協奏曲



ヒラリー・ハーンのグラモフォン移籍の1枚目はバッハのヴァイオリン協奏曲だ。今では当たり前のようになってしまった古楽器系の演奏ではなく、現代楽器による颯爽とした演奏である。では、ここに納められた演奏は、今の評価からすると「異端」なのか。ここにバッハ音楽の奥深さと複雑さと歪曲と、そして誤解があるように思える。

バッハは演奏家からすると「試金石」のようなものであるらしく、高名な演奏家であってもバッハと対峙するのは相当の解釈論と経験をつんでからでないとできないという人も多い。ハーンはデビューからしてバッハのソナタを演奏し世界をあっと言わせたのだが、私はここでもあっと思ってしまった。

1曲目のヴァイオリン協奏曲 ホ長調の出だしのスピード感ときたらどだろう。一瞬にしてハーンの巧みな音楽世界にさらわれてしまう。そして Adagio での憂いと翳りの表現。見事なまでの対比が、それこそ一分の隙もない音色で奏でられる。だからといって、感傷的であったり感情表現に傾きすぎているというわけでもない。聴いてみれば、切れの良い表現で淡々とバッハの音楽的世界が語られているように思える。

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