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2007年8月27日月曜日

カレル・ヴァン・ウォルフレン:日本人だけが知らないアメリカ「世界支配」の終わり

『日本 権力構造の謎』や『人間を幸福にしない日本というシステム』などの名著で知られるウォルフレンの近著です。

冷戦終結後、アメリカによる世界支配が強まったと日本人は考えているが、そんなことはない。むしろアジアや欧州各国はアメリカから距離を置き始めているし、アメリカの主張してきたグローバリズムだって幻想であったのだよとウォルフレンは主張します。

彼にかかると『フラット化する世界』や『レクサスとオリーブの木』を書いたトマス・フリードマン氏はこの人物の視点はジャーナリストというより、億万長者のものだと評した方が正しい(P.91)となり、ピーター・ドラッカーについては彼がセレブリティであったから日本でベストセラーになったのだと断じます。セレブリティとは一般大衆の大多数が名前を認識できる人々のことであり、広く知られているから有名なのだと説きます。そのセレブリティ文化の中には9.11後にベストセラーとなったフクヤマやハンチントンも含まれます。

つまり、われわれが聞かされる誤った物語を助長する思想というのは、必ずしもわれわれが耳を傾ける必要はない、ただ単にメディアによって生み出された奇妙なセレブリティ文化によって世界的な読者を獲得した人物たちによって創られるということなのである。(P.38)

アメリカなどが進めたグローバリズムとかネオリベラリズムというのは、かつて、より安い労働力を求めて発展途上国の安い労働力を利用して先進国が育ったように、資本的にも投資的にも障壁をなくして、再びアジアやアフリカなどを搾取している構図(侵略的資本主義)に他ならないのだと説きます。

こう書くと、実も蓋もありませんし、陳腐な話題に響くかもしれません。あるいは、本書の内容に違和感を覚える人も居るでしょう。それにしても、彼が言う「間違った物語」について、同調したり反論するメディアは殆ど見られないということ。そもそも「物語の存在」さえ俎上に上らないということこそ、日本では問題なのではないかと常々思っています。

本書の投げかけているテーマは、実際は上に要約したような単純なものでは到底なく、自分的には消化しきれていません。しかし、「アメリカ支配」をどう脱するか、世界とどう日本が向き合うか、ということは古くてしかも極めて現代的にして重要な政治テーマであると思います。

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