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2003年5月2日金曜日

 「都市再生」を問う~建築無制限時代の到来(岩波新書)


副題が「建築無制限時代の到来」というもので、現在東京などの大都市を中心に進められている大規模再開発の実態を暴き、将来に対して警鐘を鳴らしている本だ。
たまたま東京にいるので本書で扱われているいくつかの巨大プロジェクトについても、熟知していわけではないにしても、全く知らないわけでもない。
巨大プロジェクトとは、かつてのバブルのハナシでもなければ、汐留(シオサイト)や、品川グランドコモンズでもなければ、六本木ヒルズのハナシでもない。これらは2003年問題として昨年来からTVでも話題にされていたが、この本が書いているのは、それらの後の巨大プロジェクトの話だ。
東京に居てさえ、現在進行中のプロジェクトに関する認識は低いのではないかと思う。だって、もう十分に建物は建っている。でも、まだ、なのだ。
誰もが、どこか間違っていると気づいているハズなのに何故これから更にまだ再開発なのか。それも、驚くような巨大な再開発が続けられなくてはならないのか。民間や公団が、都心部に超高層住宅を(それも分譲価格や賃貸価格が、一般サラリーマンの常識とかけ離れた値段で)、これからも造られ続けなくてはならない積極的理由は見出せない。
ディベロッパーも官庁も、そしてゼネコンも、そして金融業も生き延びるために点滴を打ち続けながら、行く先の見えない将来に向って走り続けるしかないというのは、もはや悲劇でさえない。
いやいや、悲劇なのは、一握りの政治家や企業なのではない。彼らは、時代に乗り遅れた恐竜として滅びればよいだけだ。不幸なのは、恐竜たちに蹂躙されてしまった、そこに住む者たちこそだ。いったい誰のための、街なのか、誰のための都市なのかと、本書は問う。
例えばかつての大規模再開発の代表格であった、六本木アークヒルズ、もと六本木谷町。森ビルが壮大な地上げを行った後に出来た巨大な更地は、まさにグラウンド・ゼロ(*)を彷彿とさせた。そして、六本木六丁目計画(六本木ヒルズ)しかり、そしてまた・・・・新たなグラウンド・ゼロの出現。かつて爆心地に住んでいた人たち、そこにあったものは、どこにかき消えたのか。私たちは何を得て、何を失っているのか。
五十嵐氏と小川氏は同じ岩波新書から、都市計画や公共事業のあり方に関する本を上梓してきている。都市計画に関する論調が、欧米型の計画的都市論に立脚していることに若干違和感も感ずるが、その点を差し置いても、今の日本がどこかオカシイこと、そしてこのままでは早晩、大きな破局を迎えてしまうのではないかということに関しては、私も同意する。とにかく日本の都市業計画が「ムチャクチャ」「デタラメ」「インチキ」のカタマリであることがよく分かる。
日本は、何もかも捨て去って、何を残そうとしているのだろうか。
(*)ちなみに、今話題の六本木ヒルズは開発面積7ha以上。住居地や市街地が形成されていた地区における7haという土地がどれほどのものなのか、自分の街の地図で確かめてみるとよく分かる、それはとてつもない広さなのだ。

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