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2004年6月7日月曜日

日曜美術館 森村泰昌の「画家のアトリエ」

日夜に放映さたNHK新日曜美術館は「フェルメール“画家のアトリエ”再現・森村泰昌との対話」と題するものでした。フェルメールという活字に惹かれて観たのですが、内容は写真家森村氏の活動がメインでしたね(笑)。

NHKは森村氏が結構お好きなようで何度か彼の特集を観たことがあります。森村氏は、知る人ぞ知る写真家でして、自らが名画のモデルに扮して写真を撮ってしまうという、変わった作品を発表しつづけている方です。

今回の趣向は、フェルメールの「画家のアトリエ」を再現して、画家とモデルになりきって写真作品にするというものですが、私が興味深かったのは、この絵が「完璧な遠近法」に則って描かれているという事実です。

この絵に接したことがある方は、森村氏も含め不思議な感覚に襲われると思います。それは「距離感」の喪失ということに象徴されるのですが、画家とモデルの距離感と、画家と壁の距離感があまりにも違うように思われることからそう感じるのだろうとは薄々気付いていました。

それゆえに、私も床タイルをもとに部屋の大きさや画家とモデルの距離を考えたこともあるのですが、今回はコンピュータを駆使した3Dによるアトリエ再現の努力のかいあって、部屋の大きさから画家とモデルの位置関係などが、数学の解を得るように明らかになりました。

それによると、モデルは壁のすぐ近くに立っており、かつ画家とモデルは非常に近い距離にあって、部屋のごく偏った位置に居るのだそうです。さらに遠近法の尺度ではモデルの身長は140cm程度と子供程度であるのだそうです。3Dのアトリエを色々な角度から見ることで、「画家のアトリエ」のアングルが遠近法的な距離感を喪失する一点であることも明らかにしています。

このような親密な空間を後ろからカーテンを捲った状態で観ているため「覗き見するような」「見てはいけないものを見た」気にさせるのかもしれません。

モデルの身長を140cm程度という点を取って、モデルがフェルメールの娘かもしれないとする森村氏の意見には同調できないのですが、むしろモデルの大きさ(小ささ)はフェルメールの作為であり、これこそ「遠近法破り」の極致的技術であるように思えました。親密でありながら茫とした、あるいは消え入りそうな儚さを感じさせる所以であると私は思うのです。


森村氏の尋常ならざる探究心により、またこの絵画の魅力に触れた思いでありました。

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