2018年12月20日木曜日

2018/12/19 釘町彰 個展 Erewhon Gallery Art Composition

中央区佃にあるGallery Art Composition で開催されていた釘町彰さんの個展に行ってきました。

釘町彰さんは1968年生まれ、多摩美術大学にて日本画を専攻した後パリへ渡り、現在もパリを中心に活躍している日本画家です。私が釘町さんを知ったのは、同じくパリで活躍している建築家の田根剛さんが、釘町さんの屏風作品の台座を造ったというところから名前を知ってだったでしょうか。

田根さんと釘町さんがどこで接点を持ったのか、注目の建築家と芸術作品がどのようにコラボするのかと興味がありました。



今回の個展に田根さんの台座の作品はないのですが、新作の「Erewhon(エレホン)」と題する大作や、釘町さんのシリーズなっているグラデーションで構成された絵など、どの絵も鮮烈な緊張感に溢れる素晴らしい作品ばかりで、少ない数ながらも見ごたえがありました。

釘町さんの絵は揉み紙を施した和紙に、天然岩絵の具にて書かれています。写真では分かりませんが、一件空を描いているグレー部も非常に深味がありますし、雪を描いた絵なども岩絵の具特有のキラキラした粒子の反射が、それは美しいマチエールを構成しています。

行った時間が平日の18時過ぎだったからなのでしょうか、それとも場所柄なのでしょうか。観に来ている人は自分ひとりでしたから、ギャラリーの方が少し説明してくれました。

釘町さんの絵は、最初に画面を黒で塗った地肌の上に絵を施すのだそうです。それゆえに、上に載せられた白にも独特の深みと奥行きが出ています。また書き込みはかなり細いものの、それでいてディテールに走るようなことはしていないようで、全体が大きな絵となった時に、眼前に空間感まで伝わるような迫力と力として観る者に迫ってきます。

個展紹介のハガキにもなっている(写真)「Erehon」というのはサミュエル・バトラーの小説のタイトルだそうで、下記に解説をコピペしておきます。



比べるのは失礼と思いつつも、絵のもつ雰囲気や方向性が、千住博さんに似ていると思ったら、学部在学中に千住さんの助手を務めていたとのこと(Wikipedia)。何となく分かる気もします。

今回は、グラデーション作品以外は風景が主体の絵と、映像作品が展示されていました。スイスやイタリアの山岳部の風景イメージ映像です、絵のモチーフとなった地域のようです。映像作品からは、自然のもつ雄大さ、神秘さとエネルギー、そしてそこに対する限りない畏敬の念を感じました。

フランスを拠点に活動しているためか、残念ながら日本での個展はあまり多くはないそうですが、また企画があれば、他の作品ももっと観てみたいと思わせる作家でした。