2021年11月30日火曜日

アンドレアス・シュタイアーの平均律第2巻

アンドレアス・シュタイアーさんのJ.S.バッハの平均律クラヴィーア曲集第2巻を聴きました。録音は昨年2020年6月から7月にかけてテルデック・スタジオ・ベルリンで行われています。

最初の曲からして「なんと華麗な!」と思わず目の前がパッと開けたような印象を受けました。チェンバロの多彩な音響の重なりに思わず声が出てしまうほど。

使っている楽器は「アンソニー・サイディ&フレデリック・バル制作、パリ、2004年/1734年ヒエロニムス・アルブレヒト・ハス(ハンブルク製)のモデル」と解説にあります。

とにかく、チェンバロの音が素晴らしい、チェンバロという楽器の多様性、多彩さを存分に発揮し、ピアノでは決して聴くことのできない音楽世界を構築しています。まさにバッハ作品が作る小宇宙といった趣きです。

かつて、シュタイアーさんのコンサートで平均律を聴いた時に「J.S.バッハの鍵盤楽器の集大成とも言うべき平均律を、シュタイアーは通して弾くべきものではないと考えているようです。(2018/12/18)」と書きました。その来日時に住友生命いずみホールのブログに、シュタイアーさんのインタビューが掲載されており、そこでも以下のように書かれています。

バッハ自身、《平均律》を全曲通して演奏することは意図していなかったと思います。なぜなら、《平均律》はツィクルスではないからです。たとえば《ゴルトベルク変奏曲》は明らかにツィクルスとして構想され、始まりと終わりがありますが、《平均律》は異なる時代の曲を集めた曲集であり、ツィクルスとしての要素はほとんど見られませんーたしかに第1巻の最後のロ短調のフーガは、12音すべてを用いているという点では総括的ではありますが。


いまでもシュタイアーさんがこのように考えているかは分からないものの、こうして聞きなれない第2巻を通して聴いてみますと、これはこれで、とても至福のフルコース体験であるなと思った次第です。

思い出しては時々聴きたいアルバムが一つ増えました。

(参考)

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