ドラッカーの本は大変示唆に富んでいます。多くの人が彼を敬愛するわけも、ドラッカーの本を1冊でも読むと良く分かります。あたかも未来を見据える預言者のように、的確に数十年後の来るべき世の中を描いてみせてくれます。
ドラッカーは「経営の神様」とか「マネジメントの創始者」という言われ方をしていますが、むしろ、人間が社会組織の中で疎外感を得ることなく、人間らしく生きるにはどうしたら良いか、ということを語っている哲学者的な面も持っているようです。そこが多くの人を惹き付ける理由のひとつでしょう。
本書の描いている世界は、まさに少子高齢化社会であり、誰もが高等教育を受けていることを前提とし、アジア諸国が台頭し、古くからの先進国では政府と官僚が機能不全に陥り、企業においては正社員の数が激減し、IT革命が進行している世界。すなわち現在進行形の今の世界がこれから向かえるべき世界を描いているのです。
一方でドラッカーの資本主義批判や市場経済理論についてのコメントも興味深い。しかしドラッカーは組織や人間にとって重要なことは、経済ではなく社会であると説いています。
例えば製造業に代表された20世紀型の労働形態と組織構造から、21世紀は高度な教育を受けた知識労働者が、フラットな組織の中で働くようになるとの予測は注目すべきです。またネクスト・ソサエティにおいては人の属すべきコミュニティーとしてNPOが重要な要素になるとの指摘には深く首肯、現在の日本にさえその萌芽が見られます。
数ヶ月前の本の感想をこうしてメモするために頁を捲ってみましたが、その一行一行に再び眼を奪われてしまいました。難解な本ではありません。凡百のビジネス指南書を読むくらいなら、本書を数時間かけて読むことを薦めます。ただ、マニュアルや解答はどこにもありません。
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