4月になってしまいましたね。今年は昨年よりも寒いせいか、桜はまだのようです。来週半ばが見ごろでしょうか。そうは言っても、固い蕾も少しずつ開いてきましたから、今日はアタマを少し開く意味で、ゲルギエフのチャイ4などを聴いてみました。
それにしても、今時チャイ4だけでCD1枚作るなんて・・・不経済ですわな。
- ヴァレリー・ゲルギエフ指揮 ウィーンpo
- 2002年10月 ウィーン ムジークフェラインザール Live PHILIPS 475 6316(輸入版)
随分前に発売されていた、ウィーン・フィルとのライブ録音です。以前はゲルギエフといえば日本盤が出たらすぐに飛びつくように買っていたのですが、この頃はまあ輸入盤が出てからでもよいか、という程度になってしまいました。ゲルギエフが嫌いになったというわけではないのですが、余りに人気が出過ぎましたから、そんなに熱くなるのも大人気ないかな、といったところです。
それでも通して聴いてみますと、流石といいますか、ゲルギエフの奏でるチャイコフスキーはよく統制されていて、なかなかに上手いなあと感じます。
チャイコフスキーの4番というのは、ある意味で身も蓋もないような音楽です。こんなにあからさまに感情を表出してしまって、恥ずかしくないのだろうか、と思うところがないわけでもありません。そんなこの曲を、ゲルギエフは、感情を全開にしてグイグイとひっぱていくような野暮なことは、実はしていません。
この演奏に荒々しさや猛々しさ、ロシア的土臭さを求め、ある意味で莫迦騒ぎのようなカタストロフを期待するならば、おそらく聴く人は肩透かしをくらうのではないでしょうか。確かに冒頭のホルンやトロンボーンの強奏を聴くと、ただごとならぬ爆演を期待してしまいますし、どこまでも底の知れないウィーンpoのメンバーが、ゴリゴリと音を出しているのを聴くと、凄いなあとは思うのですが、チャイコフスキーの詩情とか叙情も上手く表現していて、音楽的には振幅のゆったりと大きな、悠然とした演奏になっているように思えます。
音楽全体を支配する、大きな波というか、うねりが感じられ、そこにストーリー性を見出すような感じに仕上がっているようです。また、今回の白眉は3楽章でしょうかね。弦のピチカートは大地さえ粒立つかのような重々しさと強さが溢れており、その強さのままに木管までもがシンクロし、第4楽章の狂騒を予兆するかのような演奏は、なかなかです。また、中間部のメロディーはチャイコフスキーがバレエ音楽作家であったことを思い出させてくれます。そのまま踊れそうな楽しさを味わえます、ここもマリインスキーを率いて長いゲルギエフならではでしょうか。
第4楽章は「狂騒」と書きましたが、これも脳天気なお祭り騒ぎにはなってはいません。下品にもならず、過激にもならず、ウィーン的優雅ささえも湛えながら、この「身も蓋もない」音楽を語ってくれます。今回のゲルギエフに落胆する人は、ここをもっとガンガンやって欲しかったのでしょうか。テンポは結構速めですし、ラストに向けての煽り方も結構凄いですし、オケ全体が強奏した後のムジクフェラインが数十センチほど振動してたのではないかと思わせるほどの音塊も聴くことができるのですがね。
私は、久しぶりにゲルギエフとチャイコフスキーの音楽を楽しむことができましたが、評価は分かれる音楽かもしれませんし、ある種類の方には全く興味の沸かない音楽かもしれません。
0 件のコメント:
コメントを投稿