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2005年4月25日月曜日

写真集:内山英明/東京デーモン


「東京の夜は悪夢のように美しい」~東京デーモン 魔都TOKYOの夜景写真集

内山 英明の写真集です。「東京デーモン」というキャッチにひかれて手に取ったのですが、数多ある東京の写真集とは一味違うものを感じました。

内山英明氏は1949年生まれ、『JAPAN UNDERGROUND』などの写真集で有名です。私たちの住んでいる世界のすぐ裏側に展開している世界を、実に見事な映像で見せてくたものですが、この東京デーモンもそのテーマの延長にあるように思えます。

都市へのアプローチは批判的でも否定的でもなく、それ故にコンセプチュアルな都市論は感じられません。そういう方向ですから、写真はむしろロマン的な雰囲気を帯びており、内山氏が私たちの見ている世界の断章ともいうべき風景に、生暖かい愛着と美しさを感じていることが伺い知れます。それは彼が自らの作品を語っているように、暗黒のもつ甘美さと恐怖への憧憬と感じられます。まさに東京世代の原風景なのかもしれません。

闇の底深く沈みゆくTOKYOの街の耽美(たんび)な輝きは心までも空虚にさせる。(中略)そんなときだ。吹き渡る一陣の風とともに物狂いするような爽快な淋しさが突然、胸を突き上げてくるのは……。夜の中にポッカリとした裂け目が広がる。裂け目から幻のように現出するもうひとつのTOKYOの姿、その一瞬の『刻(とき)』の姿が私は好きだ。

耽美的なまでの輝きと、都市の中にポッカリと浮かび上がる巨大建築群や廃墟、それに奇妙なオブジェたち。このように書くと単なる陳腐な都市写真でしかないようですが、彼の写真からはその先に蠢くゴシック的な魔界の存在を暗示させてくれます。まさに「魔窟」という表現が適切なのですが、「魔窟」という言葉の持つイメージが、これまた陳腐化しているため、ちっとも彼の映像の魅力を文章では伝えられません。

写真集を買ったわけでないのですが(>だから買った上で感想書けよ)内山氏の名前は記憶にとどめておくとしましょう。

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