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2004年5月1日土曜日

「正論」の靖国論

月刊誌「正論」は産経新聞社によるオピニオン誌で、編集方針は岩波書店の「世界」とは対極にある雑誌といってよいことは皆様ご存知の通りです。

2004年5月号は『靖国・英霊「分祀」論の妄を弁ず』と題して、かの東京大学名誉教授の小堀桂一郎氏が執筆しておりました。キワメて楽しそうな話題でしたので思わず購入して読んでみました。

これまたご存知のように小堀氏は我が国を深く愛されており、中国や韓国や東南アジア諸国の内政干渉など無視して堂々と首相は終戦記念日に靖国参拝を行わなくてはならないと強く主張している方です。

小堀氏の批判は今年2月15日のテレビ朝日「サンデープロジェクト」に出演した元衆議院議員中曽根康弘氏の靖国神社の発言に対し『歴然たる無知と誤認がある』と批判することから初め、靖国神社に対する世間の誤解について力説しています。

本号では小堀氏のほかに、弁護士の稲田朋美氏、アジア経済人懇話会会長の前野徹氏も寄稿しておりますが、どれもこれも論旨は同じです、ポイントとなる点をいくつか引用しておきましょう。

(中曽根氏を初めとする「或る党派の人々」は)中共政府の走狗となつて護国の英霊を辱めることを敢へてし、結果として祖国を敵に売る行為に加担した(小堀氏)

殉難者の英霊の「分祀」を言ひ張る人は、結局は、当人が東京裁判をどう見るか、といふ踏絵を踏まされることになるのである。(小堀氏)

「A級戦犯」を、"分祀"するようなことがあれば、現在の日本人が東京裁判の正当性を認めたことになり、サンフランシスコ平和条約発効後、国民の総意で戦犯釈放等を早期に実現させた先達の努力を水泡に帰し、わが国の将来に遺恨を残す(稲田氏)

(靖国神社に象徴されているのは)祖国に対する忠誠心、すなわち命を懸けて国を守るという崇高な精神(稲田氏)

本来なら東京裁判によって断罪された日本の汚名を晴らすべき日本の首相が自虐史観に染まっている(前野氏)

日本にはA級戦犯など存在しない[...]靖国神社に祀られる英霊は戦犯などではない(前野氏)

自虐史観に対する舌鋒の鋭さは相変わらずですが、さらに中国や韓国に対する不信感もかなり凄いものがあります。

(南京虐殺記念館の入場が無料になったことに対し)でっち上げの南京虐殺事件を自国民の心に強く刻み込み、反日感情を高めようという意図が見え隠れ(前野)

(南京虐殺記念館を中国政府が「世界文化遺産」としてユネスコへの登録申請を計画したことに対し)南京事件の虚構性を暴く実証的研究の続出によつて、中国当局は形成不利と知り、焦り始めたのである。(小堀)

韓国では密かに日韓の歴史の塗り替への布石が着々と打たれている。[...]水面下では日本の神話を自国の歴史にすり替えるための研究が韓国の歴史学者たちによって進められている。[...](韓国には)日本列島全体を属国化しようとする意図すら隠されている可能性もある。(前野)

日本はアジア諸国から見下され、今や食い物にされようとしている。中韓の対日批判の高まりはその狼煙である(前野)

ふう、もうたくさんですね。でもこういう方が以下のように主張するのですよ。

共存共栄、強者は弱者をいたわるという日本の美風(前野)

その論理ですと、日本はアジアの強者ですから、大東亜共栄圏という発想から弱者であるアジア諸国を貧困と列強諸国から解放しようとしたのですし、その「日本の美風」の精神の延長線でイラクを独裁政権から解放することのお手伝いをしているということになるのでしょうか。

たとえ南京大虐殺(の規模や瑣末的なディテール)が虚構であったとしても、日本人が民間中国人を殺したという事実は残るわけですし、一人殺しても虐殺した過去は変わらないと思うのです。今アメリカがファルージャで行っていることも、フセインがクルド人に対して行ったことも虐殺であることに異論がるでしょうか。

小堀氏を始めとする東京裁判否定者は、戦勝国の一方的利害による偏向した裁判は不当であり、冤罪であるとまで主張するのですが、ある時代の歴史が下した審判を否定し去ることで日本に名誉と栄誉が回復するのでしょうか。

彼らのような主張をする人が率いる日本がどういうものなのか、中国や韓国に敬意を(全くといってよいほど)払わず、不信と蔑視と利用価値しか感じないような主張の中でどうやってアジアで共存できるのでしょう。彼らの描く日本に住みたいと思いますか?

1 件のコメント:

  1. 中国や韓国に敬意を(全くといってよいほど)払わず
    →そんなこといってませんよ。
     むしろ互いの立場を学習して理解するスタンスをお互いに持たなきゃならないといっています。

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