2005年7月23日土曜日

ガロア/武満徹:海へⅡ、Ⅲ

Takemitsu:I Hear The Water Dreaming
④Toward the SeaⅡ ⑥Toward the SeaⅢ
Patric Gallois(fl) Fabrice Pierre(hp) Goran Sollscher(g) BBS so. 9/1999 London Warehouse Deutsche Grammophon 453 459-2

先日書いたようにガロアのアルバムには三つのバージョンの「海へ」が納められています。この構成を「しつこい」と思う人もいるかも知れませんが、私は興味深く三つの違うバージョンを楽しんでいます。

「海へⅡ」ハープと弦楽合奏による演奏ですが、これがなかなかいいんですね。弦が加わることでアンサンブルの美しさが加わり曲も重層的に深みを増したように聴こえます。響きも三つのバージョンの中では一番「現代音楽的」に聴こえるかもしれません。もっとも耳障りな音はどこにもなく美しく抒情的な音楽に仕上がっています。ハープも弦との伴奏の中でしっかりと存在感を主張しており、アルト・フルートと三位一体で音楽を作っているという感じです。ガロアの木管による抑えれた音色は弦の音色とも良く合っています。Cape Codなどは圧巻で舌を巻いてしまいます、こんなに美しくてよいのだろうかと疑問が沸くほどです。

「海へⅢ」はハープとの演奏ですが、「海へⅡ」の後に聴くと驚くほど新鮮に聴こえるから不思議です。歌舞伎の始まりは浅黄幕を切って落としますが、弦がない響きはそのくらい劇的な効果を生んでいます。弦がない分フルートとハープの役割は相対的に高まるのですが、その効果がこんなに鮮やかに曲のイメージの違いとして現れるとは。ギターとハープの音色の違いも微妙で、どちらにも味わいがあります。強いて言うとハープとの共演の方が、お互いにぶつかり合うような「強さ」を感じます、意外とハープは骨太なのですね。「海へⅡ」のデッサンのようでありながら、しかし曲としては別物。完成度が極めて高く曲の輪郭も際立っています。

かようにして聴いてみるとⅠからⅢまで通すことで面白さがみつかるのだなあと思えます。

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