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2004年4月19日月曜日

展覧会:東京藝術大学美術館:再考 近代日本の絵画

この展覧会は東京藝術大学大学美術館、東京都現代美術館、セゾン現代美術館が共同して企画したもので、19世紀末から100年にわたる日本の近代・現代の絵画を通して展示することで、日本の近代化のプロセスを再考し再構築し、日本の未来にあらたなひとつの展望を開くことを期待して開催されているものです。

朝日新聞でも紹介されていましたので、知っている方も多いと思いますが、私のお目当ては一重に狩野芳崖(1828-88)の「悲母観音」を観る事でした。

この観音像は、芳崖が死の直前まで描き続けたもので、かのフェノロサも絶賛した作品として知られています。教科書で観た事のある人も多いと思います。

絵画も音楽もそうですが、複製と実物というのは似て非なるものであるのですが、この絵画もまさにそういうものでした。絵画というのも一期一会みたいなところがありますから、観られたことを素直に僥倖であると思わないわけにはいきません。

この絵は結構大きなサイズなのですが、その慈愛に満ちた光と輝きは、宗教心が無い者であっても捕らえて放さない魅力に満ちています。

観音様というのは、中性または男性として描かれますので、顔には聖徳太子のようなヒゲがあるのが、違和感を感じますが、悲母観音の足元から泡のように誕生した赤子の笑い顔が愛らしく独特の雰囲気を醸し出しています。慈悲に満ちた観音の表情と、非常に細やかな描写が見事です。色使いも下側の青色から上へ向かって金色色に変化してゆく様など(左の絵では到底伝わりきらないのですが)気高ささえ感じます。

芳崖も素晴らしかったのですが、展示室に入ったとたん圧倒するように聳え立っていた竹内久一(1857-1916)の「伎芸天」、これも凄かったですね。

この作品は、シカゴ・コロンブス世界博覧会(明治26年)で日本の伝統的木彫芸術を世界に見せるために作成されたものでしたが、損傷が激しかったため長く展示できず、最近修復されて、ようやく日の眼を見るようになった作品です。(すごく大きいです)

日本の伝統的な木彫の流麗さ、華麗さ、そして力強さ、いやどこを取っても、前から見ても、横から見ても、そして後ろから眺めても、すくと立ったその威容は感嘆するばかりで声を失ってしまいました。修復された色彩も実に落ち着いた派手さで惚れ惚れします。

これらの作品は、東京藝術大学が所有している作品で、まさに芸大は「お宝の山」なのでしょうね。
その他には、いくつかの日本画や、黒田清輝、岸田隆盛、和田三造、佐伯裕三などなど、中学時代の教科書で観たような「名画」、西洋絵画の亜流のような絵画などが多く展示されていました(図録を買っていないので詳述できず)。

こうして眺めさせてもらいますと、いかに近代日本が貪欲に西洋の文化や技巧を取り入れてきたがが如実に分かるような気がします。憧れと驚きに満ちながら、新たな世界を開拓してゆく様は、果敢にして勇敢であるといえますが、やはり一方で、その変化があまりに性急であり、消化しないまま表面的にだけ次々と西洋文化を吸収したフリをしていただけではなかったうかと、思わずにはいられませんでした。

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