この年の秋だったと思う。ヤマハ主催での小さな発表会があり、出ることになった。
「吹きたい曲はないか?」と問われても、何が吹けるのかわからない。このころ、「フルート名曲30選」とか、バッハのフルート・ソナタ集など、楽譜だけは持っていた。知っているところのさわりだけ吹いて、喜んでいるレベルであったので(今でもそうだ)、満足に出来そうな曲などあるわけがない。
大胆にも、モーツアルトの「アンダンテ」をやってみようとしたが、ちょっと駄目そう(当たり前だ!)。ということで、フォーレの「シチリアーノ」を吹くことにした。
この曲にしたところで、今もって満足に吹けないのに、よくやったもんである。
本番では、練習で出来なかったところは、やっぱり出来ず、練習で間違えたことがない場所でも、平気で間違えたりすることも分ったが、人前で吹くという非日常性や、本番へ向けて練習するという緊張感が結構楽しかったりしたものである。
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