指揮:ロリン・マゼール
演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:4/1968
EMI DECCA POCL-6043 Legends (国内版)
第一楽章の出だしから切り込むよな激しさが感じられ、続くチェロの音の枯れた音と低弦の支えには、一切の妥協のなさを感じる。そこから立ち昇ってくる金管の和音にも厳しさと激しさを感じ慄然とさせられる。音楽により導かれた先は、澄み切り凍てついたかのような虚空の世界さえ感じ取ることができようか。しかし、何と美しい世界であることか。
第二楽章のスケルツォをどう考えるかは演奏のポイントかもしれない。マゼールの演奏からは、素早い動きの中から生命感や若々しい躍動感を感じ、前向きのムーブメントを表現しているように思える。不安さはすぐに翳を落としはするものの、ポジティブな方向での音楽作りを目指しているように思える。また、この楽章については、やたら懐古的や田園風に描写するのを避け、むしろ推進力を前に出し厳しい走句を形作っているように聴こえ、それがかえって心地よく響く。
第三楽章の冒頭はフルートの主題が象徴的である。続くホルンの音色を契機に深く想いに沈んでゆくような音楽つくりは曲想に従順であるように思える。時々現れるチェロのテーマは、ここでも何の飾り気もなく澄み渡り、あたかも波ひとつない湖面を眺めるかごとき静謐さがある。後半になりテーマが展開され大きなさざ波が立ち始めるが、ここでもマゼールは感情の波を押さえ込み冷静に棒を振っているように思える。感情の波は山を迎えても崩れることはなく、再びうちに秘められてゆくのだ。クライマックスの苦悩でさえ救済を求めるかのように吐露しているが、一人日記に感情をぶつけているかのような感がある。
第四楽章はマゼール盤でも鉄琴が使われている。音楽は素早く進行してゆく。この楽章でもそうなのだが、とにかくマゼールの演奏はイキがよく勢いが最大の魅力だと想う。さらに先に述べた音のクリアさと構成の明快さにより音楽的にスリリングに仕上がっており、辛口にして全く退屈しない演奏に仕上がっている。後半に明るさが消え失せてゆく部分の劇的さは余りにもドラマチックで、背筋に刃物を突きつけられたかのような冷ややかさと恐怖さえ感じる。
もっとも、4番へのアプローチというのは、苦悩や暗さよりも、むしろ明るさと推進力に重きを置いた演奏に聴こえる。ムダを配したキリリとした(多少、粗いという印象も受けるが)音作りは辛口の印象を受けるが、演奏解釈的には希望をもたせた演奏であると感じる。ラストにしても救いが全くないという終わり方ではないと思える。
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