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2002年5月6日月曜日

宮部みゆき:パーフェクト・ブルー


「パーフェクト・ブルー」は、宮部みゆきのデビュー長編小説だ。ミステリは嫌いではないのだが宮部の作品を読むのは初めて。「模倣犯」から読んでもよかったのだが、長いのでこちらを選んだ。

初めて読む作家でも、読んでいる最中から引き込まれる場合と、今一つピンとこない場合があるが、この作品に関しての感想は後者のもの。ストーリーそのものは悪くないし、裏の社会的なテーマ(?)も、実際にありがちな話であり鋭くよく考えられている。(ミステリなので詳細を述べるのは避ける)

主人公のひとり進也少年は、大友克彦の名作「アキラ」のひたすら元気でくたばらない、金田少年とだぶるキャラクターだと感じ入ったり、するってーと加代ちゃんはケイに当たるし、おお、進也が出入りする「ラ・シーナ」は「青木屋」か、などと勝手にイメージさせて読んだりしたのだが、それでもいけない。

犬のマサが一人称で語るというスタイルに乗れないというのでもない。犯人が最初に分かってしまったからというのでもない(だって最後までその動機については明確にできなかったし)。

作品の持つ迫力と緊張感が乏しいところが、私にとってマイナスなのだ。描写が甘いとか言うのではなく、作品の持つ雰囲気に乗れないのだ。彼女の小説は、この作品を読む限りにおいては、解説に鮎川哲也が書いていることがぴったりと当てはまる、そのまま引用してみよう。

「ミステリの多くは陰惨な殺人事件を描くものなのだから、読了した読者までが救いのない暗い気分になるようではいけない、と私(鮎川)は考えているのだが、宮部さんの描くものは軽快な筆さばきに加えて内容が明るい、これは作者の生来の気質からくるようで」

鮎川の前半の考えに同意するかは別として、独特の明るさとTVのホームドラマのような雰囲気、あるいは、火曜サスペンス劇場そのままのようなテイスト、これに乗れない。まあ、救いのないミステリを読みすぎて健全なる精神を損なってしまっているんだろうかと反省しないでもないが。あ、宮部ファンの方、ごめんなさいね、今度は「模倣犯」読みます。

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