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2002年5月3日金曜日

小泉政権の1年を振り返る

小泉政権が誕生してからほぼ1年が経った。新聞マスコミでは政権の評価や世論調査の記事が載せられていた。現在の支持率は40%を上回るもので依然として従来の政権よりは高支持率であるものの、発足当初から見れば激減しているということになる。

私の小泉政権に対する評価は複雑である。まず彼の靖国神社参拝に代表される歴史認識の甘さには全く賛同できない。有事関連法案と個人情報保護法案(作家城山三郎は「治安維持法より悪い」と言い切る)を提出したことにも危機感を感じる。米国テロの時の自衛隊なし崩し派遣を含め、彼がどこまで有事法案に本気なのかが見えない点ももどかしい。彼の論は分かりやすいぶん単純で深みがない、従って、これら外交を含めて小泉内閣へは評価できないどころか、歴史的に汚名さえ残す政権になるのではないかと危惧する。

一方で、彼の掲げるスローガンの構造改革と景気回復についてはどうだろうか。倒産も相次ぎ失業率も上がった。これが「痛み」であり、構造改革の現れだとするならば、ひとつの「変化」ではある。また彼が意図したかどうかは別として、与党、野党の対立の構図というものも、小泉内閣にて完全に崩壊したように思える。引き続いて露呈した鈴木・加藤・辻本・井上議員などの離党、離職は、政党政治そのもののメルトダウンさえ予感させるものだ。彼の「自民党を壊す」ということが図らずも実現しつつあるのかと皮相的な見方さえできる。少なくともYKKは完全に崩壊したわけだ。

彼が昔から変わらず主張していた郵政民営化は、クロネコに10万本のポストを要求した郵政議員により事実上先送りされた(葬り去られた)。特殊法人改革も形だけで実際は変わってはいない。道路公団の件もしかり、医療費の個人負担増も根拠が不明確なまま先送りされた。景気回復のための構造改革では企業倒産が相い次いだが、流通大手のマイカルは潰すがダイエーは政治的配慮から存続を決断、残る不良債権のカタマリであるゼネコンは中堅の数社が倒産したのみ、3月危機がなかったかのような振る舞いだ。

こうしてみると、彼を評価できる点は少ないことに気付く。もっともこれがたった1年の間にあった事柄なのかと考えると改めて驚くが。彼が政権になってから、良くも悪くも政治への感心は高まった。逆にそれが不信と期待はずれに終わったとしてもだ。

評価点が少ない(どころか危ない面も多い)のだが、それでもまだ私は小泉政権が存続することを期待している。小泉首相の力量や政策に同意しているのではない。何か今までの体制が流動的に崩壊しはじめており、小泉というトリガーがそれを加速させているように思えるからなのだ。彼の政権下にある限り、まだ何かもう少し起こりそうな予感がする。それを見極めたいという気がしている。まあ、捨て鉢なようだが「ダメになるところまでダメになってしまえ」という心境だ。ここまで来たら一度ウミは出し切らなくてはダメである。


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