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2004年3月28日日曜日

展覧会:パリ1900 ベル・エポックの輝き

東京都庭園美術館に「パリ1900 ベル・エポックの輝き」と題する展覧会を観てきました。ベル・エポックとは「よき時代」という意味で、まさにパリの文明が花開いた19世紀後半から20世紀初旬の芸術潮流の作品を集めたものです。

テーマと場所柄でしょうか、若い方よりも年配の女性の方が多い展覧会ではありましたが、私はそれなりに満足した時間を過ごすことができました。

絵画では印象派以降、モローやルドンの象徴主義、彫刻ではロダン、バルトロメ、そしてルネ・ラリック、エミール・ガレ、ジョルジュ・フーケらのアール・ヌヴォの装飾美術が展示されていました。これらの作家は、私にはほとんど馴染みのないものであっただけに、最近観た印象派との画風の違いやら、1900年代のパリの時代風景など、様々な意味で興味深いものでした。

この展覧会での圧巻は、やはりチケットにも使われているジョルジュ・クレランの《サラ・ベルナールの肖像》(1876年)でしょうか。TV東京の「美の巨人たち」でも紹介されているので、番組を見た方もいらっしゃるかもしれません。

ベルナールは当時のパリで活躍した大女優です。彼女の自宅での肖像とのことで、ベルナール自身もこの絵を大そう気に入って亡くなるまで手放さなかったそうです。しかし、この絵は(何号なのかは分かりませんが)非常に巨大でして、このような絵を飾ることができる自邸というのも、すごいものだなと思うのでした。ベルナールはこの絵のとおり「女王然」とした大女優で上昇志向の強い女性であったようです。傲慢とも不遜とも思える態度が何ともいえません。一番気に入ったのは実は足元の横目でこちらを見ている犬だったりしたのですが・・・

絵の横に、まさに自宅のソファでくつろぐ彼女を撮影したモノクロ写真が並べて展示されていましたが、絵と写真を比べてみると、それはそれは絵を手放したくなくなるのも分かる気がいたしました。

ベル・エポックの時代は、印象派の時代とそんなに変わらないのですが画風は全く異なります。例えば左のジャルル・ジロンの《手袋をした女性、通称パリジェンヌ》(1883年)など、「ベル・エポック」とか「アール・ヌヴォ」とか「パリ万博」の時代の雰囲気にはマッチした絵で、描かれている女性が美しいだけに、売店で絵葉書がよく売れているようでした(私も買った)。思い入れを廃して冷静に鑑賞すると、いかにもという絵ではあるのですが、等身大に近い大きさの絵の迫力には、俗っぽさも消し飛んでしまうようでした。

印象派のピサロやベルト・モリゾの作品も1点づつ展示されていましたが、これらの絵と比較してしまいますと、印象派は色彩は華やかで明るいのですが、タッチなどの点で繊細さに欠けるという印象を受けてしまうのも確かでした。ルノワールの絵もありましたが、これはいただけないというか・・・ノーコメントとしましょう。

繊細さや細やかさという点では装飾美術には眼を見張るものがありました。特に写真のフーケの作品などは、微細な細工を施された金属は実に見事で、女性でなくても一つくらい欲しくなると思うのでした。庭園美術館のアールデコ風の内装が施された朝香宮邸で観るデコラティブな装飾具やガラス細工は格別のものがあります。(オバサン達が動かないのですよね)

これらの作品は、パリ市立プティ・パレ美術館所蔵作品とのことですが、テーマの通りパリの「よき時代」の雰囲気が漂ってくる展覧会であったと思います。パリ万博のときの写真も何枚か掲示されていましたが、日傘をさして、腰まわりのボリュームを出したスカート(何て言うのかな?)を身につけた淑女がパリの中を闊歩しているのが写っていて、ああいうカッコウの女性が歩いていた時代がウソではなかったのだなと改めて感心したのでありました。

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