先日はグールドの「フーガの技法」などという、音楽の極北のような凄まじい演奏を聴いてしまいましたので、心を癒さなくてはなりません。
このアルバムは以前聴いていたのですが、レビュウらしいものを書いていなかったので再聴です。
ベアトリーチェ・ラナ Beatrice Rana(1993-)は、前アルバムの「ゴールドベルク変奏曲」もよかったですが、このショパンも凄まじくいいです。
以前もどこかで書きましたか、自分的にはショパンは昔から苦手な作曲家だったんです。しかし、ラナのショパンを聴いてしまうと、その気持ちは根本から覆されてしまいます。
このアルバムの冒頭、音の一つ一つが語り掛けてくるかのような存在感の強い陰影のある分散和音による「エオリアン・ハープ」と呼ばれる第1番が聴こえてくるやいなや、誰もがこの演奏に耳を惹き付けられることでしょう。
輸入元の解説です、まさにその通り。最初の音から鳥肌ものです、最初の和音を聴いただけで、ラナの演奏の虜(とりこ)になってしまいます。
アルバムを聴き進めていくと、聴き手の呼吸にあわせて染み込んでくるような絶妙な間合い(ルバート)の取り方、そして内声部に潜む旋律の歌わせ方の心地よさがたまりません。彼女の演奏は極めて即興的に聞こえるも、実は精緻な計算がされていることに気が付きます。もちろんこれを支えているのは彼女の驚異的なテクニックであり、恐ろしいまでに研ぎ澄まされた感受性です。
こう解説で続けるように、情感や感性に訴えてくる演奏です。
GRAMOPHONEによるCritics' Choice: Our Favourite Classical Albums of 2021でも、Patrick Ruckerが以下のように評しています。
Beatrice Rana again displays artistry and imaginative breadth well beyond her years in these stunningly original, deeply expressive Chopin performances. Technical mastery is a given in Études delivered as though improvised in inspiration’s white heat. The Scherzos combine flights of fury, elation, fantasy and despair with islands of ethereal calm.
とにかく弱音での歌い方が美しく、羽衣のベールをまとっているかのような上品さと柔らかさ。そして、その対比としてのフォルテでの力強さ。
情感に傾いて訴えるようでベタな演奏 ではありません。アルバムジャケットの写真のような、どこかから乾いた暖かい風が吹いている。
ああ、なんて素晴らしい演奏でしょう、言葉になりません。特にスケルツォ第3番ときたら。
12の練習曲 Op.25
- 第1番変イ長調『エオリアン・ハープ』
- 第2番ヘ短調
- 第3番ヘ長調
- 第4番イ短調
- 第5番ホ短調
- 第6番嬰ト短調
- 第7番嬰ハ短調
- 第8番変ニ長調
- 第9番変ト長調
- 第10番ロ短調
- 第11番イ短調『木枯らし』
- 第12番ハ短調
4つのスケルツォ
- 第1番ロ短調 Op.20
- 第2番変ロ短調 Op.31
- 第3番嬰ハ短調 Op.39
- 第4番ホ長調 Op.54
(参考)
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