2021年12月7日火曜日

ヨーヨー・マとエマニュエル・アックスによるベートーヴェン チェロソナタ全集

2020年8月録音、2021年6月発売の本盤は、1981年から85年に録音されたものの再録音になります。あれから40年の年月が経っているのですね。

1980年前半と現代では、世界の枠組みも大きく変わってしまいました。同じ曲であっても、時代背景が変われば、音楽や演奏に求めるものも、自ずと変わってくるかもしれません。

ここから聴こえてくる音楽は、まさに円熟の極み。安定した技量が生み出す安定した音楽、あたかも自然にそこから湧いているかのような、生命の泉のような演奏です。

ふたりが、心底この音楽に親しみ、慈しんでいることが伝わってきます。初期の最初の2曲はベートーヴェンという肩肘張った堅苦しいところがまるでなく、音楽を聴く至福に包まれることができます。中期の傑作の森の時代に作曲されたソナタ第3番の第3楽章アダージョ・カンタービレの美しさときたら喩え様もありません。後半は、時に厳しく激しく、そして過ぎ行けば甘美に懐かしく、音楽が人生の断片でもあるかのようです。

ヨーヨー・マ(1955-)66歳、エマニュエル・アックス(1949-)72歳、と高齢ながらも、音楽は、馥郁(ふくいく)とか円熟さに加えて若々しさとみずみずしささえ保っているのですから驚きます。

この激動の時代にあって、ヨーヨー・マのような楽天的な芸術家は、私たちから失われようとしているものが何かを思い出させてくれるかのようです。

旧盤もそのうち聴いてみようと思います。



  1. チェロ・ソナタ第1番ヘ長調 作品5-1
  2. チェロ・ソナタ第2番ト短調 作品5-2
  3. チェロ・ソナタ第3番イ長調 作品69
  4. チェロ・ソナタ第4番ハ長調 作品102-1
  5. チェロ・ソナタ第5番ニ長調 作品102-2
  6. モーツァルトの「魔笛」より「恋を知る男たちは」の主題による7つの変奏曲WoO46
  7. ヘンデル:ユダ・マカベウスの「見よ、勇者は帰る」の主題による12の変奏曲WoO45
  8. モーツァルトの「魔笛」より「恋人か女房が」の主題による12の変奏曲 作品66

(参考)

0 件のコメント:

コメントを投稿