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2004年3月11日木曜日

有事関連法案について

既に成立している有事関連三法案に付加される形で、国民保護法案など有事関連7法案が9日閣議決定されました。これをもって政府は有事関連法案が完結することになるそうです。昨年の有事法案は、国民保護などを後回しとしたことが批判されました。1年以内に関係する法案も成立させるとのことでしたので、今回の案件がそれに当たるわけです。


��法案とは以下の法案だそうです。



主に外国からの攻撃の排除を目的とする法案


  • 外国軍用品等海上輸送規制法案

  • 米軍行動円滑化法案

  • 自衛隊法改正案

  • 交通・通信利用法案


国際人道法の実施などを主目的とする法案


  • 国民保護法案

  • 国際人道法違反処罰法案

  • 捕虜等取り扱い法案


3条約


  • 改定日米物品役務相互提供協定(ACSA)

  • 国際人道法であるジュネーブ条約の二つの追加議定書の締結承認案


既成立の有事関連3法案


  • 武力攻撃事態対処法案

  • 自衛隊法改正案

  • 安全保障会議設置法改正案



閣議決定を受けて、10日(水)の大手新聞社説を紹介しておきましょう。


毎日新聞は『有事7法案 時間かけじっくりと議論を』とし、民主党、共産、社民党の役割を改めて促しながらも、


 テロ対策支援法やイラク復興特別措置法により、自衛隊の海外派遣が拡大された。加えて有事法制の仕上げである。安全保障のあり方が大きく変化しても、「専守防衛」が基本である。国会では防衛の基本理念を踏まえ、じっくりと時間をかけて審議をすべきだ。

としています。「専守防衛」という死語になりつつある言葉を持ち出していますが、改憲なくしてのなし崩し的法案成立、あるいは違憲論争には触れていません。


朝日新聞は『ACSA――米新戦略とどこまで』とし、『いざという時の国民の生命や権利を保護する仕組みをできる限り整えておかなければ、まともな有事法制とは言えない』という主張を繰り返しながらも、改定日米物品役務相互提供協定(ACSA)について、『条約案のなかにひとつ、日本有事の枠を超えるものが含まれていることも見逃せない』と主張しています。


 この改定が実現すると、米軍を支援するための自衛隊の海外派遣1件ごとに個別のACSAを結ぶ必要がなくなる。[...]これは米政府が長く日本に求めてきた「NATO並みACSA」の実現である。



 確かに、新たな脅威を放ってはおけない。できる手段で、同盟国として米国に協力することもいい。だが、軍事力を頼みに単独行動もいとわない、いまの米国とともに、日本はどこまで行くのか。 一見軽く見えるACSA改定は、実はそんな課題を突きつけている。

基本的には有事関連法案は容認しながらも、野放図な米国追従についてはやんわりと批判しているというところでしょうか。ACSAという余り注目されない面での議論は、問題の深刻さを語っているようです。正面切って批判をしないのは、そういう論旨ではいままで散々主張しているからということでしょうか。


日本経済新聞は『有事法制の各論も与野党合意で成立を』とし、『しっかり議論したうえで最終的には昨年同様、民主党の賛成を経て成立させる必要がある』『昨年ようやく総論部分の三法が成立したのは、前者が与党と民主党との共通認識になったからであり、安全保障感覚の成熟化を意味する』とし、有事関連法案の成立に全面的に賛成した上で、今後も与野党の合意で成立させることを期待しています。


最後に産経新聞ですが、『有事法案決定 自分達の問題と考えたい』とし、『主要先進諸国で他国からの侵略や攻撃に備え、国民を守る法制を整備していないのは日本だけだった』とやっと有事法制が成立したことに安堵の意を表明するとともに、『最大の課題は、国民一人ひとりが自分の国や家族を守る決意を持って有事に備えることができるかどうか』と国民の意識のあり方にまで言及をしています。ですから『民間防衛組織の創設が見送られ、既存の自主防災組織の活用にとどまったこと』を憂い、ドイツの例を引き合いに出しながら、


 私権制限は、慎重であらねばならないが、必要なときがあることを示している。有事では自衛隊だけで国防はまっとうできず、国民の一致協力した支援が必要だ。それが他国に攻撃を躊躇(ちゅうちょ)させる抑止力につながるのだ。

とし、他誌より相変わらずの突っ込んだ主張を展開しています。

本日の朝刊各誌(電子版)においては、読売新聞だけが有事関連法案について社説で触れていませんでしたが、法案賛成の論調は変わらないでしょう。ということで、大手4誌は相変わらずの論調ではあるのですが、朝日、毎日といった新聞も法案には仕方なく同調しているという雰囲気がにじみ出ています。昨年の有事関連三法案が成立してしまっている以上、個人保護法案の成立が不可欠であると主張しますが、もはや後戻りはできないというスタンスです。

与野党の内部でも意見には微妙な温度差がありますが、総論で有事法案成立に賛成という動きはもやは変わりようがありません。そういう中で、かつての憲法論争はもはや過去のものとなってしまったのでしょうか。今回も7つもの法案を十分な議論を尽くせぬまま成立させてしまうことは、過去に遺恨を残さないのでしょうか。それとも、日本が「軍隊」を有する「普通の国家」となる上での、貴重なる第一歩なのでしょうか。


「自衛隊は軍隊」という言い方は、小泉首相が図らずも吐露した言葉ですが、実際には、相手が攻撃してこなければ攻撃ができないのでは「軍隊」とは言えず、警察の延長でしかありません。軍隊とは自ら攻撃を仕掛けることができる集団で、近代装備の有無で決まるものではありません。ここのところも、今後改正されてゆくのでしょうか。

日本は過去の清算を十分にできていないという論調もありますが、戦後50年以上堅持してきた日本国憲法というのは、一体何だったのでしょう。


��1世紀においては平和外交などというものは、世の中を知らない者の発想でしかないということでしょうか。中国をはじめとして、今まで経済的に貧しかった国々も力を付けてきて、国際的な勢力地図においてせめぎあいを演じる中で、軍隊もないようでは圧力さえかけられず、なめられるばかりで、国として一人前とは言えないということなのでしょうか。では、日本は中国と張り合おうというつもりですか。


平和外交が否定されますが、そもそも平和外交を全面に打ち出して活動している政治家(NGOとかでなくて)、は存在していますか。哀しいかな、存在したことのないものであれば否定されても仕方ありませんね、夢物語だと。世に永世中立国という言葉がありますが、そもそもその概念こそ夢物語でしたから、平和外交というのも、夢のまた夢なのかもしれませんが。


それでも敢えて言うとすると、戦争の反省とその後の50年の憲法論争の歴史を全て放り去ったかのような昨今の動きと、野党とマスコミのだらしなさには、ほとほとうんざりしています。日本はどこに向かいたいのでしょう。「普通の国」に何故なる必要があるのでしょうか。世界の中の多くの小国のような「普通の国」では相手から侵略されてしまいますか(たとえばドイツに攻められたベルギーのように)。


自らの勉強不足を棚に上げて再度書きますが、日本国憲法とは何だったのでしょう。日本に対する意味と、世界に対する意味は。それが清算されない限り、私は先に進めません。それは、やはり歩みの遅い「神学論争」でしょうか。また機会があれば考えてみます。

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