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2021年7月6日火曜日

土屋仁応 展 日本橋高島屋 2021年

土屋仁応(1977-)さんの個展が日本橋高島屋本館の美術画廊で開催されていました(2021年6月30日~7月6日)。

高島屋デジタル図録

土屋さんは、東京藝術大学彫刻科で文化財保存学を専攻された技術を生かし、仏教美術の個展技法を用いて、羊や小動物、幻想的な動物などの木彫を制作されている方です。

SNSで作品写真を見て、これはぜひとも実物を見なくては!と思い、会期が今日までと知って、慌てて行ってきた次第です。

ワクチン接種が進んできたとはいえ、コロナ変異種なども流行しており、いまだ世界はコロナ禍を抜けることができないでいます。そんな今の状況の中で、創作をする作家さんたちは日々何を感じ、何を考えて制作をされているのか興味のあるところです。

土屋さんの個展は「鵺」と題されています。「鵺」という作品(上写真)は「目に見えない不安感が形を持つとしたらどんな姿見か」を考えながら制作したそうです。

画廊の写真は撮れませんので、Twitterから下にも貼っておきます。


作品は「鵺」のような想像上の動物から、猫、鼠、羊など、動物が主体です。動物たちには、目に水晶を埋め込む玉眼といわれる技法が用いられています。これが作品に生命と意思を与えてるようです。

以下の引用は、土屋さんが本個展にあてたメッセージです。

大きな角を持つ羊、羚羊は魔除けのイメージ
波紋状や古色風の仕上げを施した駱駝やネコは「いま、ここ」ではない異世界への憧れ

木彫の彫刻の刃の後を残した技法(専門的にはなんというのでしょうか)の作品と、表面を滑らかに仕上げた作品に分かれています。どちらも微妙な彩色が施されています。

兎や栗鼠など小さな動物たちは、不安な現実とは無関係なように暮らしているか弱き生き物たち、加護される民衆

特にこの「か弱き生き物」の佇まいといいますか、弱さ、儚さ、それでいて、埋め込まれた眼の光の妖しさと強さなどは、作品としての深さを感じます。単に「かわいい」とか表するだけではなく、生きているもののしたたかさを秘めています。

筋書きはありません、舞台の配役のようなものを漠然と思い浮かべなら個展の全体を作っています。

様々な役割を持たされた動物たち。それは、作家のみならず、それを鑑賞する私たちそのものの姿でもあるのでしょうが、そうやって、いろいろな役割を果たしながらも、現在のこの先行きの見えない時代を、なんとか乗り切って生き延びていくしかないのか、ということを、薄ぼんやりと思いながら会場を後にしました。

会場は静かなのですが、土屋さんの造った動物たちの声なき啼声や、湿った草土の上を歩を歩く静かな足音を、どこか遠くで聞くような思いでした。それは、愛おしい生命そのものでありました。

とても良い作品を見ることができました、ありがとうございます。

日本橋高島屋での個展は今日で終了ですが、全国巡回展のようで、秋の9月8日から14日に新宿高島屋で改めて開催されるようです。

(参考)

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