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2021年12月28日火曜日

「転移のすがた」アーティスト・レジデンシー10周年記念展~柔らかな光空間に展示された現代美術作品

メゾンエルメスフォーラムで開催中のインスタレーションを見てきました。以下のようなコンセプトの作品展です。

「アーティスト・レジデンシ―」は、アーティストをエルメスの工房に招聘し、職人と体験の共有や協働制作を行う財団のプログラムで、2010年より継続して開催されています。現在までに、34人のアーティストが21カ所の工房に滞在し、皮革、シルク、クリスタル、シルバーなどの様々な素材を用いながら、職人技術に触れ、好奇心溢れる作品を生み出してきました。

(中略)

銀座メゾンエルメスフォーラムでは、今まで取り上げることの少なかった、レジデンシーの参加に協力を仰いでいる推薦者(メンター)と滞在アーティストの作品にみられる相関関係に注目し、3組のアーティストたちをご紹介します。2020~2021年のプログラムに参加したクロエ・ケナムとその推薦者であるイザベル・コルナロ、エンツォ・ミアネスと推薦者のミシェル・ブラジー、そして、2012年に参加したフランス在住の日本人アーティスト、小平篤乃生と推薦者、ジュゼッペ・ペノーネ、これらのアーティストたちの作品には、一般的な師弟関係における技術や美学の継承だけではなく、芸術的感性が応答しあうアーティスト同志のあいだに、転移のすがたを見出すことができます。

詳細はエルメスHPのリンクを参照ください。解説と作家のインタビュー動画も見てから行った方が理解が深まります。

こちらは小平篤乃生の作品が展示してある空間。小平さんは広島生まれ、現在はフランス・ランブイエを拠点に活動しているアーティストです。パリ国立高等美術学校で、ペノーネさんに師事しています。


こちらは小平篤乃生さんのクリスタル作品。中に歯車と針がセットされており、時計と反対周りに回りながら、掠れた音を静かに出しています。針が触れるガラスには一部だけノッチが彫られており、一回転するごとに「カチ」という音を刻みます。静かな展示空間にあって繰り返される時間を感じさせます。


静的な静謐な展示空間です。


こちらはフランス トゥールーズ生まれのエンツォ・ミアネスさんの作品と、メンターであるモナコ生まれのミシェル・ブラジーさんが展示されている空間。先の展示空間とはかなり正確の異なる作品です。

ミアネスさんは「個人の神話であるような私生活の断片や日常にあるふれたものを通じて「生命」を表す作品制作を行う」と解説にあるように、雑多なものを集めてオブジェを作っています。結構、異形でして、最初はなんぢゃこりゃ?みたいな感じです。

ミシェル・ブラジーさんのとコラボ空間で、床に散らばる卵の殻や花びら、ドッグフードで作った動物の骨格などの展示の方が目に付きました。床に描かれた大きな抽象絵画のようで、見方によっては美しくもあり、グロテスクでもあります。ミアネスさんのガラクタのような作品と相まって、変化する日常の中の意外性みたいなものを感じます。


こちらはパリを拠点に活動するクロエ・ケナムさんのクリスタル作品とパリとジュネーブを拠点に活動する、メンターのイザベル・コルナロさんの作品。単純な果物などの造形物かと見えるのですが、意図は深いようです。以下に解説を引用しておきます。

様々な背景や文化に由来するグラフィック、言語、有機物、家具といった要素 を本来の文脈から抜きだし、図式化して用いることで、多種多様なモチーフ が、どこから来たのか分からない抽象的な記号や装飾的なフォルムに変化 する。別の文脈に置かれることで、意味が変わり、物語が語り直される。その ような移動の効果と可能性を問いつづけている。

分かるようで分かりませんね。これらのオブジェが一つだけあっても単なる装飾品ですが、複数集まることで存在感を増しています。


展示空間の吹き抜けを上から見てみます。


こちらは2階のクロエ・ケナムさんの作品。


上から見下ろしてみます。




展示空間は写真撮影可です。美術手帳にも解説がありますが、写真の撮り方がさすがにプロ、上手いですね。そういう風に見えるのか!と写真を見て新たな発見がありました。

現代美術は、素材やらオブジェやら、それら異質なものを内包する空間の緊張関係まで含めて作品です。その「場」に居ないと感じられないし感覚が研ぎ澄まされません。

来年の4月3日までの開催です。機会があればまた行ってみます。

ちなみに、建物外壁のガラスを彩る虹色は、フランスのアーティスト、ジュリオ・ル・パルクさんの「シリーズ14-2 分割された円」という作品です。今のうちに外観写真も撮っておかなくてはですな。

(参考)


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