2002年1月17日木曜日

ゼネコンの贈収賄事件に思う(その2)~業界の構造

大型物件、公共工事における競争入札。入札に絡むダンピング疑惑と贈収賄疑惑。むかーしから聞く話だ。

正確な数字ではないかもしれないが、私の記憶では、建設市場は縮小したと言われても官民合わせて50兆円規模、そこに、スーパー大手から一人親方まで含め55万社超、500万人超の会社と人が働く。バブルが崩壊しても会社数(人員もか?)は増加したという異常な業界。建設業許可が簡単に取れること、一部は暴力団まがいの隠れ蓑的なところもあるのかも知れないが、最近では建設業など利益が少ない、頭の良い人間は建設業に参入しようなどとは考えないであろう。

建設業の利益率は、一般に3%程度。売上高は恐ろしく多いものの(スーパー大手で一社当たり年間1兆3千億円程度)利益率は驚くほど低い。建設業のもうひとつの特徴は、重層下請け関係。スーパー大手に限らず、いわゆるゼネコン(総合建設会社)は作業員を有していない。トヨタや松下などの工場系と違うところである。請けた仕事は全て下請け=専門協力会社と契約し仕事をする。その彼らも、どこかに仕事を発注し・・・ひどいときは5次以上の重層下請け契約となっている。

こういう構図がおかしいと思う事業者は、ゼネコン抜き、あるいはC/M会社といわれるマネジメント会社を通して発注することを試み始めている。ゼネコンなどなくともプロジェクトが完遂することに気づき始めている。

問題点や改善点は昔から見えている。会社の駄目なところも分かっている。それなりに手は打っているのだが、はかばかしい効果は生まれない。体質も新しいビジネスモデルも見出しきれていない。しかし、会社としての損益分岐点を考えると、受注は確保しなくてはならない。もたもたしてれば、他に仕事をするところは山のようにある。条件が悪くて誰も取らなかった仕事というのは存在しない。

建設業界はM&Aなどが馴染まない。何故なら、企業間の保有技術は横並び、営業先も大部分が重複している。合併しても他社との差別化の強力な武器もなく売上高は、おそらく全く伸びない。特に公共工事の入札制度においては、受注機会が半減することを意味する。抜け駆けするか、誰かがつぶれるのを待つのみ。しかしこれが、なかなか潰れない。(最近になってゼネコン数社を持株会社の傘下に入れて統合しようという動きも見え始めた。この形式だと受注機会の減少は防げるというのだ。)

借金棒引きしてもらった企業が、ダンピングと言われてもおかしくない価格で仕事をとってゆくと、内部からは怨嗟の声さえ聞こえるという。しかし、市場はそうは見ていない。「それでも建設費は高い」と言う。実際は原価を遥かに下回っているものも多いと聞く。原価の根拠さえわからなくなってくるのだろうか。

企業に課せられた要求は、品質のみならず作業員の安全まで含め膨大な管理項目が並ぶ。極端な話、作業員が自分で滑って転んで怪我をしても、工事現場内ならば労働災害適用で元請責任が課せられる。建設業の内部では、自分で自分の体を守る自己責任という考え方は存在しない。廃棄物処理も契約先が不法投棄していたとしたら、それも元請責任となる。

かくして、八方塞りで、精神的にも経済的にも自立できない業界が、もはや何をして良いのか変わらずうめいている。うめきの中から、「グダグダ言ってねーで、実弾でいけや」という古い奴らの声が暗躍する。嗚呼・・・もはやこの業界は内部から変わることは不可能なのか?

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