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2021年6月10日木曜日

交響曲第7番 キリル・ペトレンコ&バイエルン国立管弦楽団

ペトレンコのマーラー交響曲第7番の録音が出ました。オケはバイエルン国立管弦楽団、2018年の録音です。ペトレンコは2013年から、ケント・ナガノの後任として同劇場の音楽監督を務めていました。このアルバムは同劇場の自主レーベルとのこと。

自分はApple Musicで聞いているのですけれど、実物のブックレットは非常に立派なようです(ちょっと欲しいかも→買わないけど)。


https://music.apple.com/jp/album/mahler-symphony-no-7-in-e-minor-live/1564332870

ペトレンコは、マーラーの作品も積極的に取り上げていますが、なにしろ録音が少ないので、どういった演奏をするのか分かりません。

しかも、マーラーでもいきなり7番「夜の歌」です。暗から明に向かうテーマでありながらも、全体にとっ散らかっているような、マーラーの曲の中でも、どちらかというと、とっつきにくい曲です。どうやらシリーズにするようですが、この曲から録音を始めるとは、とも思ったものです。

さて、一聴してみますと、どうも自分のイメージしていた「マーラー像」とちょっと違う。あれ、終わってしまったよみたいな感じです。演奏時間は73分と、この曲にしては早いほうなのだと思います。かといって、セカセカしたという印象はありません。

むしろ、解像度がはっきりしていて見通しの良い音響、演奏になっています。バイエルン国立oも厚い音を奏でてくれていて申し分はない。

それでも、何か足りないのですね。音の混沌といいますか、マーラーの捻じれと諧謔というのでしょうか、優等生がマーラーを解釈して演奏しましたみたいな感じで、マーラーのドロドロしたところに、あまり寄り添わないといいますか。

これは自分の思い入れのあるマーラー像のためでしょうか、すなわち、バーンスタインやテンシュテットのようなマーラー像を期待したからなのか。

音盤が出たばかりなので、ネットにもあまり感想がありません。Freudeという新しく立ち上がったサイトに、この盤のレビュウがありましたので、一部を引用してみます。

かつて留学時代に受講した楽曲分析の講義のなかで、ジャン=ジャック・ヴェリー博士(フランスにおけるドイツ・オーストリア後期ロマン派音楽研究の第一人者)がマーラーの交響曲第7番はレンブラントの絵画と美学的にとても近いものだと語っていたのを思い出した。当時はなんとなくわかったような気がする程度だったが、このペトレンコの演奏を聴いて、初めて博士の言っていたことが感覚的に理解できた。ペトレンコの《夜の歌》に差し込む光は、暗闇の中のろうそくの炎や月の光のように柔らかく、温かい。私はこれまで、この交響曲の響きの大伽藍にばかり目を向けていたように思う。ショルティとシカゴ交響楽団の録音に代表されるソリッドで引き締まった演奏を好んで聴いていた。そうした演奏に注がれる光はオーケストラを隅々まで照らす、映画撮影用の大型照明のような輝かしさであろう。一方ペトレンコの演奏は、まさしくレンブラントの描く陰影のように、弱い光が細部の本質を照らし出すのである。(Freude)

レンブラントといえば、彫りの深い光と影を想起します。レンブラントを持ち出すなど、なかかか、うまいことを言うものです。

それにしても、以下の輸入元情報にあるように、このペトレンコらしい「完璧」な演奏が、ライブ録音だというのだから驚きです。ペトレンコはスコアを緻密に研究することでも知られているようで、曲解釈でも演奏面でも破綻がないのでしょう。そう、感情面も含めて破綻がないからこそマーラー的に聴こえないのかとさえ思ってしまいました。


バイエルン国立歌劇場自主レーベル「BSOrec」始動。
第1弾はペトレンコ指揮による高密度のマーラー7番!

「このマーラー7番はあらゆる点で議論の余地なく最上級だ」・・『ジ・アーツ・デスク』
「素晴らしいバイエルン国立管弦楽団による真に輝かしいマーラー7番」・・・『ザ・ガーディアン』
「バイエルン国立管弦楽団による、息をのむばかりの完璧な演奏」・・・『アーベントツァイトゥング』
「超高解像度のマーラー。CDはいつ出るのか?」・・・『ミュンヘン・メルクール』

17世紀のバイエルン選帝侯の宮廷歌劇場に起源を持ち、モーツァルトやワーグナーのオペラを初演してきたドイツ屈指の名門、バイエルン国立歌劇場が自主レーベル「Bayerische Staatsoper Recordings (BSOrec)」をスタート。そのリリース第1弾に選ばれたのは、2013~20年に音楽総監督を務めたキリル・ペトレンコ指揮によるマーラー: 交響曲第7番のライヴ録音!
2018年5月28日と29日にミュンヘンで行われた演奏会は、灼熱の完全主義者ペトレンコの下で、超高精度・超高密度、そして凄絶なまでの高揚感で聴衆や評論家を圧倒し、続くロンドン公演でも大喝采を浴びました。レーベルの船出にふさわしい1枚です。(輸入元情報)


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